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「いろは!一個までですわっ」
「おさらにのっていたので」

掴んだマシュマロを百歳に取り上げられた。おさらも同時に引かれてしまう。

「小さな体だと食べ過ぎが心配ですよね」
「もんだいない」
「ありますわ!マシュマロと大差なく、マカロンも持てない小さな体でたくさん食べないで」

言われ小さな両手を見つめた。これでは甘味が食べにくい。

「きゃあっ!?」
「どうしたせんきこうほ!」
「どうなさったの!?」

泉姫候補の悲鳴が上がりテーブルを駆け、近寄る。

「な、何か……何かが」
「どうした」
「特に異変はありませんけれど」
「ひゃっ」

状況がわからないながら身体を強張らせる泉姫候補の異常事態に跳び、膝の上に降りた。

「そこか」

スカートの裾から何かが見え駆ける。

「いてっ!おい、かみつかむんじゃねぇ!」
「なにをしている、からくれない」

髪を掴み強く引くと唐紅が現れた。

「いまのところたいしょほうほうがねぇからまんきつしてるんだよ」
「なぜせんきこうほのすかーとのなかにはいるひつようがある」
「ばかか、てめぇは。こんなことちいさくなきゃできねぇだろ」
「いろは、唐紅。みことさんのお膝の上で話すのをおやめなさい」

百歳に首根っこを掴まれ持ち上げられた。唐紅は暴れる。

「そうですよ、からくれないせんぱい。それではただのへんしつしゃです」
「へんしつしゃ!?それはいけない。みことくんをまもらねば」

いつの間にかテーブルの上には蛟と姫空木もおり、こちらを見上げていた。

「ごういならへんしつしゃじゃねぇ!」
「合意のわけがありません。みことさんが不快に思われてました」
「不快というかくすぐったくて……」
「すぐにきもちよ……てっ!おい蹴るなくそいろは!」
「せんきこうほにきがいをくわえるならしゅくせいする」
「わたくしの手に持ち上げられながら喧嘩をなさらないで」
「じゃあおろせ!」
「いろは、みことさんを守って差し上げて」

百歳に泉姫候補の目の前に下ろされた。泉姫候補は戸惑った様子でこちらと百歳を見遣る。

「あの、ありがとうございました」
「なにもしていない」
「でもすぐに助けようとしてくれましたから」

そう言って離された皿から一枚クッキーを手に取り顔を寄せてきた。

「お腹いっぱいになったら食べるのをやめて下さい。あと百歳さんには内緒です」
小声で言われクッキーを見つめる。
「お礼です」

泉姫候補を見つめ、再びクッキーを見つめる。甘い香りはクッキーのだけではないだろう。

「ならばきみとはんぶんにしたものをわたしにわたしてくれ」
「半分でいいんですか?」

頷くと半分に割られ差し出され受け取った。一口かじる。この大きさでは一口かじったところでなくなりはしない。

「美味しいですね」
「そうだな。あまくておいしい」

半分にしたもう片方を食べる泉姫候補を見上げ、もう一口かじった。



H25.7.21

半分の片方
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