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「そういえばお兄ちゃんって私にあんまり何か頼んだりしないよね」
「そうか〜?お兄ちゃんはいっつもお前に迷惑かけてるような気がして……だからせめてお前の願いは叶えたいと思ってるんだ」

愛しの妹は俺の返答に首を傾げて、傾げて……や、やめてくれ。お兄ちゃんにそれは刺激が強すぎる。
その仕草が可愛過ぎる。

「じゃあ何かない?何か言ってほしいなって思って」

笑顔で願いを叶えてくれると言う愛しい愛しい俺の妹。
きっと妹には見えない天使の翼があるんだ。あってもおかしくない!
あ、でも飛んで行かれたら困る。困るというか泣く。

「お兄ちゃん?」
「わっ!?な、何だ、どうしたそんな顔を近づけて」
「唸り出したからどうしたのかなと」

知らぬうちに唸り出していたか。
妹よ、お兄ちゃんをどこまで悩ませれば気がすむんだ。
いや、でもそんな妹がいい。ずっと考えさせてくれるから。

「じゃあ、あのな」
「うん」

実はありすぎて何を言っていいか言葉に詰まる。
ありすぎるなんてわかったら欲にまみれた兄だと思われてしまう。
どうすれば……。

「ピアス、つける時はな。俺に穴を開けさせてくれないか?」
「えっ!?…ふっ、ふふっ」

驚いたと思ったら口を押さえながら笑い出す妹。
何か変な事を言ってしまったかと心臓の音が変に鳴っている気がする。

「笑っちゃってごめんね。でも」

言葉を切って少し俯見る。顔が少しだけ赤い。

「お兄ちゃんに開けてもらおうって思ってたんだよ。痛くてもお兄ちゃんなら……いいから」

いつの間に俺の妹はこんなに綺麗になっていたんだろう。
痩せたからとか成長したからとかじゃなくて、目の前からふっと消えてしまいそうな綺麗さ。
俺なんかが触れてしまっては駄目なんではないかと思ってしまう。

「お兄ちゃん?」
「俺が……」

それでも触れたいし、抱き締めたい。
だから抱き締めてどこかへ行かないよう願う。

「そんなに強く抱き締めなくても私はここにいるよ?」

こんなにも俺を暖かくしてくれる。
それでも不安でそれでも怖くて抱き締めると、背中に両手が回される。

「ありがとう」

そう言うと腕の中から可愛い笑い声が聞こえた。

受け入れてくれた君が
嬉しくて
怖くて
こんなにも愛しい
目を覚ませば消えてしまうんじゃないかという
不安に襲われる
今までと少し違う今
そして変わっていく未来
痛みを与え与えながらも
それはかたちのないカタチになっていく
それはピアスにも似て
少し違うもの



H18.2.18

それはピアスにも似て違うもの
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