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「げっ」

愁生を探して屋敷の廊下を歩いていると愁生の後ろ姿を発見した。
声をかけようとした瞬間に愁生と向かいあっていた人物が見えて声に出る。

「焔椎真、何だその声は」
「だって黒刀がいるとは思わねぇだろ」

愁生に窘めるように言われる。
愁生の向かいにいた黒刀と視線が合う。が、興味がないといいたげにあからさまに視線を逸らされた。
腹が立ち足音を響かせながら愁生の横まで行く。

「お前な!もう少し可愛いげ見せてみろよ!」
「お前にそんなものを見せたところで意味がない」
「もう少し静かに歩け」

黒刀は視線を逸らし続け窓に顔を向けている。
こんなことでいちいち腹を立ててるわけにはいかないがどうにもこいつとは合わない。

「で、お前は何しに来たんだ」
「あぁ、何か千紫郎がおやつ作ったから愁生も呼んできてくれって……って、黒刀、お前素通りして行くなよ」

俺が愁生に用件を伝え終わるか終わらないかのうちに黒刀が俺が来た方向へ向かおうとしていた。
引き止めるように肩を掴むと睨まれる。

「何だ」
「言う事あるだろ」
「ない」

きっぱりと簡潔に言われるがその態度が頭にくる。

「焔椎真、行く事にかわりはないだろう。いちいち突っ掛かるな」
「だってよ……」
「あ、いたいた!あれ?一緒だったんだ」

廊下の先から十瑚が駆け寄ってくる。
俺は愁生を、十瑚は黒刀を呼びに出たはずが黒刀は愁生といたため俺がいっぺんにすませてしまった。

「ならもう聞いた?千紫郎さんがおやつ作ってくれたからみんなで食べようって」
「あぁ、聞いた」
「嘘つけ!」
「嘘じゃない」
「お前には言ってない!」
「焔椎真、うるさい。じゃあ行こっか」

十瑚にまで窘まれてしまい俺は黒刀の肩から手を離した。
俺と十瑚への態度の違いは何だ。そもそも俺以外への態度は普通なのに何で俺にはあんなつんけんするんだ。

「抹茶プリンだって。美味しそうだよね」
「そうだな」

歩いていく二人の背中を理不尽な気持ちで見つめていた。

「合わないのもあるんだろうがどちらも威嚇してるからいけないんだろう」
「してない!する理由がない」

愁生の言葉を即座に否定した。
別に仲よくしようとは思ってないが普通にしようとは思ってる。

「でも見てると仲が良さそうに見えるけどな」
「は?」

愁生は少し笑って見せると先に歩き出してしまう。
俺と黒刀が仲がいい?
逆だろ。

「待てよ、愁生!」

愁生が言った言葉の意味はわからないまま愁生を追い掛けた。



H22.8.16

仲がいいわけがない
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