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「おい、ウサギ」
またお前は俺をお前の家に迷いこませたのかと文句を言いかけて、ふと違和感を感じた。
「お茶の時間なんだから邪魔をしないで頂戴」
「いや!お前が俺を来させたんだろ!」
毎回毎回現れたり迷いこませたりしながらあたかも偶然を装う。
このやりとりにも慣れたからそれはいいとする。
でもやはり何か違和感があるとお茶を飲むレイチェルを凝視してみた。
「女性を凝視するなんて最低ね」
「見た目はどう見ても子供だから最低じゃない」
「デリカシーのかけらもないのだから最低も何もないわね」
それ以前の問題だとでも言うようにわざとらしくため息を吐いた。
そんな事を言われて俺はやはり違和感が気になって仕方なかった。
「貴方の目は節穴なの?」
「は?ちゃんと見えてるっつーの」
今度は先程とは違う意味をこめたため息を吐かれる。
それには何故か少しいらついた。だったらはっきり言えばいいじゃねぇか!
「帰る」
「待ちなさい」
帰り方など知らないがとりあえず会話は終了させようとレイチェルに背を向けた。
「散々呼んでおいて気付かないなんて節穴と言われてもおかしくないわ」
「散々呼んでおいてぇ?」
何の事だかさっぱりわからないが振り返る。
そしてやっと違和感が何だったのかわかる。それが僅かに動いたからだ。
気付かせようと動かしたんだろうが。
「ウサギ、ウサギの耳がついてるぞ?」
いつもは髪を束ねるリボンがウサギの耳のように見えたが、今は実際にウサギの耳がついていた。
「そうね。気付いたらついていて面白いから貴方に見せたらどうなるのかと思ったのだけど」
「悪かったな!面白い反応ができなくて」
そんなものを期待されても困る。俺はリアクション要員じゃねぇ。
「しかし違和感はあるがあまりわからないな」
「触らないで」
「何だよ、けちけちすんなよ」
近寄って手を伸ばそうとすると動作から察したのか止められた。
別に珍しいものじゃなくてもレイチェルについてるというだけで珍しい。
「耳だけか?」
「なぜそんな事を聞くのかしら?」
「そりゃあ耳と言ったら尻尾だろう」
すると突然だんまり。
沈黙は肯定ってやつか。耳はいいとしてうさぎの尻尾は小さくて可愛いしな。レイチェルにとってはあまり見せたくないものだろう。
「もういいわ。帰りなさい」
「こんな面白い事になってるのに帰れるかよっと!」
「ちょ、ちょっと!」
無理矢理俺だけ帰されないように椅子に座るレイチェルを持ち上げた。
これで無理矢理帰そうとしてもレイチェルも一緒に飛ぶはめになるだろう。
「しかし本当軽いな」
「ラグナ、離しなさい!」
「尻尾を見せてくれたら離してやるよ」
それは嫌なのか暴れるのをやめた。
そんなに嫌なのか。
「服の上からは見えないのだから見たら変態よ。これから見かける度に変態さんって呼んであげる」
「うっ……」
ラグナ・ザ・ブラッドエッジは変態だったなんて噂されるのが思い浮かんでしまった。
しかも見た目は幼い少女に言われるのだ。ロリコンもつきそうで嫌だ。
「わかった。無理強いはしねぇ」
「わかったなら下ろしなさい」
「もう少ししたらな」
すぐに下ろすと思ったのか俺の言葉に少し驚くレイチェル。
しかし嫌がるそぶりは見せなかった。
「やっぱり変態なのね」
「ちげぇよ。ちいせぇなーと思ってさ」
「喧嘩を売っているの?」
「だからっ……俺がでかくなったんだって事だ」
素直に言ってやる気はなかった。そう言ってもレイチェルにはわかってしまうんだろうともわかっていたから。
「そうね。大きくなったわ」
微笑んで両手をこちらに伸ばしてくる。
それに促されたようにレイチェルを抱きしめていた。
伸ばされた手がぎゅっと俺を抱きしめる。
「ウサギが寂しくならないように……」
「は?」
耳元で小さく囁かれたが最後の方がよく聞こえなかった。
いや、元より口にしていないのかもしれない。
「よくわからねぇけどレイチェルの前からはいなくならねぇよ」
身体がというわけではなく何となくレイチェルが小さく感じて、安心させるように言った。
それをレイチェルが望んだかはわからないが。
「信じてるわ」
本当はもっとからかってやろうと思って持ち上げたが、少なくともウサギの耳がついている内はこのままでもいいかもしれないと思った。
たとえそれが本物の耳だろうが、リボンだろうが俺にはすぐにはわからないんだからな。
心地よい重さがゆだねられているのだから。
H21.8.30
心地よい重さがゆだねられているのだから
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