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「貴方はうさぎをどう思ってるのかしら?」
「はぁ?」

後ろからついてくるウサギの問い掛けに思わず振り返った。

「ウサギ?おまえ自分の事をどう思ってんのか聞いてんのか?」

突然行く手に現れたため無視を決めこんだら後ろからついてくる。
あげくにこの問い掛けだ。わけがわからねぇ。

「私は自分の事を“ウサギ”とは言わないわ。通常“うさぎ”と言えば動物の事だと察せないなんて愚鈍ね」

いつもの人を馬鹿にするような笑みを向けられ背中を向けた。
そして何も言わずに歩き出す。

「ラグナ、私の質問に答えなさい」
「わけわかんねぇ」
「貴方はわからなくてもいいのよ」

わざと強調したように聞こえた。
俺はわからなくていい。知らなくていい。
何もかも知ってる顔でいつのまにかそばにいる。

「うさぎはうさぎだ」

腹が立ち勢いよく振り返り言い放つ。
するとついてきていた足を止めてウサギが見上げてきた。

「あくまで答えないつもりね」
「おまえが聞きたい答えなんて知らねぇからな」

ウサギは一瞬だけ表情を曇らせて背を向けた。宙に振り回される長い髪に目がいくと束ねるリボンに自然と目がいった。
ウサギの耳を連想させるリボン。今では俺より小さくてよりウサギを思い浮かばせる。

「小さいな」

そう呟くと踏み出そうとした足が止まり顔が僅かにこちらへ向けられた。

「うさぎっていえば小さいだろ」
「単純ね」
「単純で悪かったな」

僅かに向けられた顔に微笑が浮かんだ気がしたがすぐに正面を向いてしまい見えなかった。

「待てよ」
「っ……ラグナ!私に触れるなんていい度胸ね」

再び踏み出そうとするウサギを引き止めるように長い髪の片側を軽く引く。
一歩近づいて髪を掴んだままウサギを見下ろした。
気付いたら見ていて、知っているのに教えない。それが腹ただしいのにこいつなりの考えがあるからなんじゃないかと思ってしまう。

「……いつのまにかそばにいる」

小さく呟いたがこの距離では聞こえたらしく驚いた表情で振り返った。

「“ウサギ”の話だろ」

追求されないように軽く言って髪から手を離し背を向けた。
結局ウサギが何が聞きたくてあんな事を聞いたのかはわからない。

「ラグナ」

背に向けて呼び掛けられる。でも今どんな顔をして振り返ればいいかがわからずにそのまま佇む事で聞く姿勢をとった。

「また会いましょう」

優しいような寂しいような声音に振り返るとそこには誰もいなかった。

「勝手に会いに来るくせに何言ってやがる」

掌を見つめ先程掴んだいた髪を思い出し握りしめるが感触は残っていなかった。


H23.1.10

ウサギの質問
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