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「また来たのかよ」
森の中へ転移すると無愛想な顔が出迎えた。
「ごきげんよう、ラグナ。今日も傷だらけね」
幼いラグナは顔や剥き出しにした腕を傷だらけにしていた。
「何しにきたんだよ」
「様子を見に来てあげたのよ。貴方が修行でどれだけ強くなったのか」
幾度ループしてもラグナは強くなるために獣兵衛の修行を受けた。
私はそれを見るのが好きだった。時に遠くから、時にこうして近くで話しながら。
いくら強くなろうともそれだけでは敵わない。それでも揺るぎない彼を見るのは好きだった。
「あら、どうしたのかしら?」
無言でいるとラグナが突然背を向けた。
一歩距離を縮める。まだ小さな身体。私よりも少し背が高いぐらい。
「ウサギ」
「え?」
今回ラグナにそう呼ばれた事があっただろうか。あまり接触はしていないから呼ぶ機会はなかったはず。
私がからかうとラグナはウサギと呼ぶ確率が高くなる。彼なりの反撃なのかしら。
「ほら、ウサギ」
「そうね、ウサギね」
彼が振り返ると腕の中にはウサギがいた。動物の白いウサギ。
ラグナはウサギの頭や腹を撫でる。ウサギは気持ちよさそうに目を細めた。
その光景が何だか面白くなくて今日は帰ろうかと転移しようとした時だった。
「ウサギみたいだよな」
ラグナの視線がウサギから私の頭上に向けられ呟かれた。
ラグナはどうやら毎回私の髪を結っているリボンを見てウサギと言い出すようだった。
今回のように実際にウサギが出てきたのは初めてだったけれど。
「あら、ならそうして撫でてくれるのかしら?」
「なっ!?そんなわけねぇだろ!あっ!?」
私がからかうように言うとラグナは動揺した。それがまた面白い。
そして騒がしくしたせいか腕の中のウサギは飛び出して走り去ってしまった。
ラグナはウサギの後を視線で追う。私もつられて視線を向ける。でももうウサギの姿は見えなかった。
“貴方はうさぎをどう思ってるのかしら?”
いつかラグナにした質問。答えが得るつもりはなかった。私も質問の意図がわかっていなかったのだから。
「ラグナ?」
頭に温かい感触がして視線を向けるといつのまにか彼は私を見ながら頭を撫でていた。
「……どういうつもりかしら?」
「別に意味はねぇよ」
ぶっきらぼうに返される言葉にそれ以上追求はせずに目を閉じた。
私にとっての貴方は何なのかしら。
貴方にとっての私は何なのかしら。
ただそばにいる。それがきっと私の答え。
「ラグナは小さいわね」
「お前に言われたくねぇよ。それにすぐにでかくなる」
「そうね」
からかいは含まずに微笑んだ。目の前のラグナとすぐに私を見下ろすまでに大きくなるラグナを重ねて。
するとラグナは視線を僅かに逸らした。でも頭から手は離れなかった。
貴方の答えはいらないわ。
こうして撫でられるだけでどうでもよくなるのだから。
H23.9.13
ウサギの回答
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