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お茶を一口飲んで容れた人物を見上げた。

「あ、あの温かったでしょうか?」
「いや、ちょうどいい」

ヴァーミリオン少尉はトレーを抱きしめていたが安心したように、抱いていた力を緩めたようだった。

「この前もこれだったな」
「これ?あぁ!少佐が好きそうだと思ったので」

好き?
確かにどれがいいかと並べられたらこの銘柄を手にするかもしれない。
だが好きかと聞かれれば好きでも嫌いでもないと答えるだろう。

「私の勘違いでしたらすみません!お嫌いでしたか?」

どうして僕自身でもわかっていない事をあたかもわかったようにいるんだこいつは。

「少佐?きゃっ!」

がちゃんと割れる音がした。
僕の振り払った手がカップを落とした音だった。

「……片付けますね」

どうしてこんな事をするのかと聞きもせずにヴァーミリオン少尉は割れたカップに近づく。
聞かれても困るが聞かれないのも苛立つ。
四つん這いになりカップを片付けようとする少尉を見下ろしながら立ち上がった。

「少尉、どうして聞かない?」
「え?」

聞き返された時にはもう少尉を後ろから覆っていた。
左手で首を撫であげ顎を掴む。

「少佐……?」
「どうしてお前は僕に近づく」
「それは少佐の事が知りた、っ!?」

左手で首を軽く絞める。手袋越しに脈打つ音が伝わってくる。
煩わしいのなら殺してしまえばいい。あいつのようにこの首を落としてしまえば終わる。

「ど……してっ」
「それは僕の台詞だ。どうしてお前がここに……っ」

また妙な感覚に襲われた。ゆらりと視界が揺らぐと笑う僕と倒れ伏す少尉。その地は赤い。

「……どうしてなんだ」

何度か感じた既視感。
知らない事のはずなのにまるで体感したかのように鮮明にその場面の感情に襲われる。

「少佐!?」

首にかけていた左手を肩にやり、右手は少尉の腿に触れた。
このわからない感覚を消したくて、別の感覚を求めて。

「やっ、あっ」
「逃げたいなら逃げればいい」

腿を撫で上げながら裾を上げていくと身体が強張る。
さすがに何をされるかは察しているらしい。
逃げればそれまで。
僕は追う事はしないだろう。そしてこいつは近づかなくなる。
それでいい。
そうすればこの妙な感覚に襲われる事もなくなる。

「何で、こんな事を……」
「こうしたいから。それだけだ」

下着の上から秘部を撫でると俯いていた顔が上がる。
そのまま指で刺激すると声を漏らした。

「やめて、んっ……くださっ」
「逃げたらやめてやる」
「やっ」

右手の手袋を口ではずし、下着をずりおろした。

「普段からは想像できないな。初めてじゃないのか?」
「ん、やぁ」

秘部に触れると濡れた感触がした。

「……いっ」

人差し指をいれてみるがすぐに痛みに反応する。

「これは犯しがいがありそうだ」
「やっ!やめて下さい!」

言葉では拒否しても一向に逃げようとはしない。
ただ堪えようとしている。
それとも懇願すればやめるとでも思っているのだろうか。

「あと10秒の内に逃げないと大変な事になるかもしれないぞ、少尉」
「少佐……お願いします。やめて下さい」

話している内にカウントをはじめる。
10秒なんてすぐだ。

「い、ぁぁああああ!?」

10秒数えてから自身を突き入れると少尉は想像していた通り痛みで声を上げた。
しかし両手を腰に据えて突き動かすが、叫んだのは最初だけであとはくぐもった声がするだけだった。

「どうした少尉。堪えるだけじゃないか」
「んぅ……ん」

赤い血が結合部から腿に伝っていた。
開かれていない分こちらも苦しい。
反応もつまらなく感じてきて右手で秘部の敏感な部分に触れる。

「ぁっ」
「痛いだけでは駄目みたいだからな」

前のめりになり左手で頬を撫でる。そのまま口の中に指を突っ込んだ。

「ふっ、ん」

まるでキスするかのように指で舌を撫でる。
秘部にもかわらず刺激を与えているせいか段々痛み以外の声も混じってくる。

「犯されて気持ちいいか?」
「ん、少佐じゃ……なければっ、抵抗してます」

指を口から出すと少尉は律動に揺らされながら途切れ途切れにそう言った。

「僕以外でも同じ事だろう」

後ろからなら尚更顔が見えないのだから。こちらからは反応は丸見えで楽しいが。

「違いっ、ます」
「なら何度僕にこうされても少尉は抵抗しないと言うんだな?」
「はい」

はっきりと言われた言葉に苛立った。
酷く犯されてるというのに逃げもしない、助けも求めない。
予想通りであって予想通りではなかった。

「少佐?ん!んやぁ!あっ!ぁあっ!」

再び両手を腰に据えて容赦なく突き動かす。
先程とは違って少尉には痛みはないように感じられた。
息が荒くなり、段々とただこの行為に没頭したくなる。
何も考えずにいたい。

「少佐っ、少佐っ!」
「くっ……」

少尉が背中をのけ反らせ声を上げると僕は少尉の奥に突き入れ流しこんだ。
混濁する意識の中で抱き込むように少尉を覆った。


すぐに服を整えると少尉は割れたカップを片付けていた。

「どうして片付けている」
「このままにしておくわけにもいかないので」

トレーの上にカップのカケラが置かれていく。
それをしばらく見ていると少尉がおかしな反応を見せた。

「切ったのか」
「いえ、大丈夫です。っ!」

屈むとわかりやすいほどに怖がるような反応を見せてくれる。
そこまでになりながらもすぐに部屋から出ずに何故片付けているのか。

「貸せ」
「え、しょ、少佐!?」

手を無理矢理取り、切れた人差し指を口に含んだ。
錆びた鉄のような味がするが舌で舐める。

「んっ」
「これぐらいでそんな反応ができるなら十分だな」

手を離し立ち上がる。
まだ口の中には血の味がしていた。

「お茶、容れてきます。口直しに」
「は?」
「私は少佐だから好きなお茶も知りたいし、少佐だから抵抗しなかったんです」

少尉は立ち上がって怯えたそぶりも見せずに言った。

「わからないな」

吐き捨てるように言ってやるが少尉は笑った。

「わかるまで私は続けますし、私は少佐から離れません。……直属から外されなければ」

自信がないのか最後は目を逸らして言ったがすぐに目を合わせてくる。

「それではお茶を容れてきます!ついでに雑巾も取ってきます!」

一礼して少佐は割れたカップを乗せたトレーを持って出て行った。
地面には割れたカップから零れた中身があった。

「僕が殺す時もお前はそんな目でいるのか」

それを見ながら呟いた。



H21.8.6

地面には割れたカップから零れた中身
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