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「ニャス、ニャス」
歩く度にそんな声を出す猫が後ろからついてきていた。
「もう飯は食っただろ!俺は忙しいの!構ってる暇ねぇの!」
「気にするニャ、いい人」
「気にするだろ!」
顔に張り付けている面は不気味なのに愛嬌を感じさせた。
だからか振り切るに振り切れない。どうにか巻くしかないか。
「てか“いい人”って何だ」
気になったからつい聞いてしまっだが自分から一緒にいてどうする。
気付いた時には目の前の少女は嬉しそうに語った。
「ご飯くれた!お前、いい人!」
「……誘拐されねぇように気をつけろよ」
とても簡潔にわかりやすく説明され半ば呆れながら、少女の雰囲気から何となくツッコむ気にもなれなかった。
「タオは強い!だかららぐにゃ倒してお金をたくさん貰うニャ!いい人、らぐにゃ知らないニャスか?」
「人の話聞いてるようで聞いてねぇな。“らぐにゃ”?」
「ニャス」
ふと何かが引っ掛かった。語尾にニャやらニャスやらつける癖があるのを考えると……まさか俺なんてことないだろうな?
俺の返答も待たずに拳を前に何度も突き出しだす。やる気は十分に感じられる。
「村のためみんなのためタオはお金を貰うニャス!」
自由奔放な少女にも守りたいものがあるのか。
愛嬌もあるし、何がしたいかすぐにわかるし、どっかのウサギとは大違いだ。
「いい人、どうしたニャ?」
「何でもねぇよ。見つかるといいな、“らぐにゃ”」
「ニャス!」
少女の頭に手を乗せる。
少女はされるがまま、でも嬉しそうに面の表情が変わった。
一瞬だけ穏やかだった過去を思い出す。慕ってくる小さな少女と少年。
「それじゃあな」
「ニャ!?」
足払いをしようとしたが見事に避けられた。猫のように身軽な動きに関心しつつ、避けた際に後ろに飛んだ隙に走りだした。
「またニャ、いい人ー!」
そんな声がして笑ってしまう。
わかりやすい奴は嫌いじゃない。普段わかりにくい奴を相手にする事が多いだけに新鮮な気分だった。
ラグナとタオカカ
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