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「役立たずで泣くだけか」

数枚の紙を持つ手が震えて落としそうになる。
堪えていたのにまた目頭が熱くなる。泣きたくない、泣きたくない。でも彼の態度は私を怯えさせる。

「……す、すみません。すぐに分けますから」

机の上にすでに分類されている紙束に置いていく。
ツバキが手伝えずに困っていたから申し出た。でもキサラギ先輩と二人だけとは聞いていなかった。
普段は穏やかに見えるのに、私に対する視線は冷たく言葉は切り刻むよう。
どうしてですかなどと問えるわけがない。答えてくれるわけがないから。

「あ……」

小さく声が漏れた。違う書類が紛れ込んでいる。分類する紙に分けた時に間違えたのだろうか。

「また手が止まっているのか」

歩み寄られて慌てて紙を差し出した。
勢いで差し出したせいか顔まで俯いてしまって上げられない。

「何だ」
「ち、違う書類が紛れてまし、た……」

声が震えそうになるのを一生懸命抑えても言葉が途切れてしまう。
紙が手から離れてすぐにキサラギ先輩が離れたのもわかって顔を上げた。
特に何も言われることもなく、作業を続けることにする。

「できるならちゃんとやれ」
「は、はい!」

キサラギ先輩の前ではなかなか出せない声がはっきり出せた。
ほんの少し、私の気のせいかもしれないけど声音が柔らかくなった気がしたから。認めてもらえたみたいで嬉しかった。
頑張れば、認めてもらえる。私もここにいていいのだとわかった。


「ノエル大丈夫?ぼんやりして」
「うん。船から降りたあとのこと考えてて」

への船の中。マコトが心配そうに覗きこんできた。

「そうだよね。ツバキを探しだす前にやることやらないとね」
「無計画にいっても駄目だよね……マコト?」

先が見えにくくて肩を落とすと力強く肩に手が置かれた。

「闇雲にいこうとするよりいいよ!あたし達は絶対にツバキを取り戻すんだから!」
「そうだよね……絶対に」

噛み締めるように呟き目を閉じる。拳を握り目を開け勢いよく顔を上げマコトに向ける。

「私、特訓してくる。持ってる力を最大限に使えるように」
「よし、その意気だ!」

マコトと笑い合う。もう一人いた友達はここにはいない。
私が認められたい、ここにいたいという居場所を一緒に作ってくれた大切な友達。

ふとキサラギ少佐のことが過った。カグツチを出る時に探しても見当たらなかった。でも必ず同じ場所に向かうはず。
次に会った時どうなるかはわからない。またあの冷たい瞳で見られるのだろうか。
首を軽く振る。今までの役立たずで泣いてるだけの私じゃない。そうならないために力を欲する。守れる力を。あの人に向き合えるように。


H25.10.8

ノエルとジン
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