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後ろを歩いているというのに部下が浮かれている事に気づく。ここ数日多少の気分の上昇などは仕事も率先してやるしミスも減っていた。だが日に日に浮かれ方が漏れだし酷くなっている。

「あっ!すみません、書類落としてましたか?ありがとうございます!」

大声が聞こえため息を吐いた。注意する気にもなれない。馬鹿が移りそうだ。

「少佐!ため息を吐くと幸せが逃げちゃいますよ!」
「馬鹿か。形でないものがどう逃げる。例えだ」
「例えだとしても憂鬱だと幸せになれません!」

わかっていてわざわざ言ったのかと苛立った。誰のせいでため息など吐いたと思っているのか。

「貴様が……。ここ数日浮かれすぎだ。自重しろ」
「わ、わかってましたか?」
「ミスがなければ目を瞑っていたがミスがあれば別だ」
「つまり、さっきのため息は私のせいですか、ね?」

恐る恐る問われわざとらしくため息を吐いてやった。少しは気がすんだきもする。

「ずっと欲しかったぬいぐるみの発送予定日がもうすぐでもう早くその日になってほしいようなほしくないようなで」
「待っていればいい。それに欲しいのに手に入らなくてもいいような物言いだな」
「この指折り数えて待つのも楽しくて」

会話を交わしているせいか先程より近寄っているヴァーミリオン少尉に目を向ける。
嬉しそうに書類が収められているファイルを抱いていた。

「少佐は確かバイクがお好きですよね?手に入る前とか高揚しません?」
「どうだろうな。早くこの手で触りたいとしか思わない」
「そうですか」
「何だ、その顔は」
「いえ、少佐も一緒だと思ったら嬉しくて」

更に締まりのない顔になる。何が一緒だというのか意味がわからないが会話を続けるつもりはない。

先程“貴様がいなくなればため息も吐かない”と言いかけてやめた。なぜ言わなかったのかなどわからない。
きっと近づいた距離とあまりにも笑うから呆れただ。


H25.10.14

ジンとノエル
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