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部下がにゃしか言えなくなった。


執務室の扉をノックする音がし答える。時間からするとヴァーミリオン少尉だろうと思ってはいたが何も言わずに入室するのは珍しかった。入室してきたのはヴァーミリオン少尉だったが扉を閉め何も言わずに頭を下げそのまま机に向かった。

「体調でも悪いのか。支障がでても困る。自宅へ」

戻れと言いかけると少尉は首を激しく横に振った。

「体調は悪くないが話せない理由があるのか?」

立ち上がりヴァーミリオン少尉に近寄ろうとすると座ったばかりに関わらず慌てて立ち上がった。こちらを制止させようと手を突き出してくる。構わずに近寄る。

「にゃっ!?」

後ずさるが椅子にぶつかりよろけた。その際におかしな声を上げた気がする。その証拠に口を両手で塞いでいた。

「ふざけているのか」
「にゃにゃ」

首を振りながら口を塞いだままくぐもった声で返事をされる。

「手を外せ」

手を降ろしたのを確認し人差し指を立て、目の前で左を勢いよく指した。

「にゃ!」

誘導されるまま首を向け声が上がる。こめかみを押さえ状況を整理しようと試みてみる。

「それしか話せないのか」
「にゃにゃ」
「何か変なものは食べたか?」
「にゃにゃ」
「何か変な術をかけられたか?」
「にゃにゃ」

こめかみから手を離し視線を上げる。

「全て同じに聞こえるぞ」
「にゃ!?」

そんな!?と言っているのは表情から察する。

「僕は誰だ」
「にゃーにゃ」
「好きなものは何だ」
「にゃーにゃ」
「同じに聞こえる」
「にゃ!?」

言っていてわからないのだろうか。言えていると思っているのか?ため息を吐き席に戻った。

「とりあえず今日は声を発するな。お前への用件は僕が答える」
「にゃ……」

頭を下げ席に座った。大方すみませんと言ったのだろう。普段ならばヴァーミリオン少尉に用件があることは少ない。だから大丈夫だろうと思っていたがこういう日にかぎって多いのは何の因果なのか。


「やっと終わりか。長く感じたな」
「にゃ」

机の前にヴァーミリオン少尉が佇みまた頭を下げる。横目に見ながら息を吐いた。

「休むこともできたはずがこうして出てきた。それは評価してやる」
「にゃ!?にゃーにゃ……」

驚きながら目を涙ぐませキサラギ少佐と言ったのだろう。

「戻らなければ相談するしかないがもうしばらく様子を見る」
「にゃにゃ?」
「仕方ない」

会話ができているのかどうかはしらないがヴァーミリオン少尉の様子を見るにやりとりはできているらしい。

「明日も通常通り出てこい」
「にゃにゃ!」

正面を向きふと口にしてみた。

「僕は誰だ」
「にゃーにゃ」
「好きなものは?」
「……にゃーにゃ」
「やはり同じに聞こえる」

しかし先程と違い俯き顔が少し赤いのは気のせいだろう。顔を上げると気恥ずかしそうに笑み頭を下げ退出した。

「……そういえば猫耳はないんだな」

自分でも馬鹿らしいことを呟き明日来たら生えてるかもしれないなどと考えてしまった。


H28.10.3

ジンノエ
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