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ずっと一緒だった。
ずっと変わらない、変えてはいけないと思った。
けれどそれはあっけなく壊された。

“どうして俺じゃ駄目なんだよ!”

それが自分の本音だったのだとわかって愕然とした。

気づいた時には大切な幼なじみの少女は意識を失っていた。
頭部から赤いものが岩を伝って流れていく。

「早くしないと……」

どうなるんだ?
何かをしようとしていた両手は力をなくし下がる。
倒れる少女を前に俺は何もせずにいた。
このまま誰も来なければきっと死んでしまうだろう。
それを望んでいる自分がいた。俺のものにならないなら、この関係を壊せないならここで終わるしかない。
終わらせたい。

俺は自分がいた痕跡がないかを確認してその場を離れた。
もしも誰かが見つけたなら受け入れよう。俺とあいつは決して結ばれる事はないのだと。
そう考えるのにあいつを傷つけてしまった事への後悔をしている矛盾。守りたかった。何もかもから。あいつの望むこの関係も。

その後あいつは発見され病院に運ばれ退院した。俺は疑われる事なくあいつの恋人であるシンが疑われた。
証拠もないのだから事情聴取だけですむはずだと思った。でもシンの父親の件もあってシンの疑いは強まってしまった。
これではシンは冤罪で捕まってしまう。俺が名乗りでればすむはずなのにそのためにはあいつへの思いを話さなければいけなくなる。それだけは避けたかった。だから犯人などいなかったようにしたかった。
そして俺はその場にいたが事故という事で終わった。
シンは全てわかってるんだろうけど。
これで終わるはずだった。幼なじみのままでいよう、罪悪感はあるけどだからこそ幼なじみのままであいつのそばにいるのが償いになるはずだ。
あいつはまだ幼なじみという関係を求めているのだから。


「シンと別れたの」

段々と普段通りに戻ってきた頃、いつものようにあいつの家に行くと告げられた。
別れた?どうして?別れる必要なんてないだろ?傍目から見てもシンを男として意識してきてたじゃないか。段々恋人らしくなってきてたじゃないか。なのに何で離れるんだよ、シン。
どうしてそれをお前から俺に言うんだ。

「トーマ、行こう?」

我にかえるとこの場から出ていきたさそうにしていた。
自分が何を口走ったのか記憶にあり、これ以上話は続けていけないと思い頷くしかなかった。

それから数日考えた。
答えなどなかった。
俺の中には守りたい、守らなければいけないという思いがあってそれが全てだった。
二人が別れた今なら自分の気持ちも言えたはずだ。でも言えない。
あいつが求める俺は幼なじみに違いないから。
壊せるわけがないじゃないか。告げたあとに拒絶されてもう戻れなくなるのが怖かった。

「シンと三人で話がしたいんだ」
「トーマの家で?」

考えた末に俺は閉じ込める事にした。
飲み物に睡眠薬をいれて目隠しをして手足を縛った。

「何だか危ない趣味みたいになってるな」

ベッドに横たわる幼なじみの少女を見つめながら苦笑する。
実際他人に見られたら明らかに好意を持っているのがわかる写真やら物がこの部屋にはある。いくつかシンに証拠として持っていかれたけど。
自分でおかしいという自覚はあったが止められなかった。

「好きで仕方ないんだ。何でだろうな」

少女の顔にかかる髪をはらう。
成長した身体を確かめるように頭から下へと視線を向けていく。

「お前に頼られて守る事が今の俺をつくったんだから当たり前か。閉じ込めてるのは俺なのに俺がお前に閉じ込められてるみたいだ」

諦めるように呟いた。理由なんていらない。ただもう離れないようにしたいだけだった。


「……トーマ」
「なに?」

数日後、身体を起こしていると黙っていた口が開いた。

「トーマはどうしたいの?」
「おかしな事聞くんだな。一緒にいたいだけだよ」

おかしなぐらいに普通に会話をした。
それ以降は手足をほどいてほしいと訴えてくるだけだった。
シンには怪しまれないようにあいつの携帯からあいつを装ってメールをした。
まだ早い、まだシンを呼ぶ時ではない。

「逃げないから目隠しをとって」
「駄目だよ」

見られたくなくて視界を塞いだ。
もう妹のような存在の幼なじみではなく、異性として見ている自分を見られたくなかった。
何度唇を塞いで、服を破き捨て去って抱いてしまおうかと思ったか。何度想像の中で犯したかを聞かせてやりたくなるぐらい気が狂いそうだった。
それでも守りたい思いが強くぎりぎりで堪えていた。

「トーマ、守って……」

ぎりぎりで堪えながらもきつく抱きしめてしまった。
そんな中聞こえた声。その瞬間この作られた密室に受け入れ、全てを委ねたのだと思った。

「トーマになら全部あげる。だからずっとそばで守って?」
「……当たり前だろ」

最初から決まっていたかのように返す。
そしてずっと焦がれた唇に触れた。


「トーマ……オレは」
「シンは優しいから俺の気持ちも考えた。俺を信じた。でも信じちゃいけない。壊せないのに俺は壊れてるんだから」

もう聞こえるかもわからなかった。すぐに倒れたシンは力をなくし眠りについたようだった。おやすみと口にしたが聞こえていないだろう。

「シン来たんだね」
「あぁ、三人で話したいって言ったら来てくれたよ」

クローゼットに一時的に隠さざるをえなかった少女の前に屈む。
目隠しをして手足を縛ったまま。あの日からほどいていた手足はシンが来る前に縛った。
抱き上げてベッドに運ぶ。

「三人一緒だよね」
「そうだな」

嬉しそうに言われた言葉に同意しながら手足を自由にしていく。

「ずっと一緒にいような」

手を差し出すと目隠しをしていてもわかるらしく、手が乗せられた。
軽く引いて立ち上がらせ倒れたシンのほうへ誘導していく。
より強固な密室にするために。どこからも壊させないために。
続いてきた幼なじみをずっと続けていく。

つくりだして守ってきた密室で俺は壊れていたのかもしれない。それでもよかった。ずっとそばにいられるなら。


H23.11.25


【君を閉じ込める場所5題:密室】
配布元:リコリスの花束を

密室-Toma side-
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