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暖かい空間で微睡む。暖かくて心地良い香りに包まれてるのにそれでも何かを求めるように手がさ迷った。
肌触りのいい布の感触に微かに目を開ける。あるのは白いシーツ。それだけ。

夢を見た。
悲しいけどなくてはならない現実。私がトーマを好きだと自覚した大切な記憶。
トーマに告白するために、トーマに妹みたいではなく女の子と見てもらいたくて頑張った。

「トーマ……」

やっぱりトーマに女の子としては見てもらえないんだと悲しみにくれた事を思い出してトーマの名前を呟いた。ただ名前を呼ぶだけで悲しみが和らぐ。
悲しむのもそれを和らげるのもトーマの存在だなんて不思議。でもそれだけトーマは私の全てだった。

「……トーマ」
「どうした?起きたのか?」

まだぼんやりとする中ではっきりと聞こえた声。
さ迷っていた手に温かい手が触れて握ってくれた。
これも夢なんだろうか。夢から覚めたはずなのに実感がわかない。

「トーマ……」
「ん?」

視界にトーマが映る。呼ぶと答えてくれて手を握り返した。

「好き」
「っ……お前」

伝えたかった。ずっと、ずっと伝えたかった言葉。
夢でもいい。トーマに伝えたかった。

「彼氏のベッドでそんな事言ったら駄目だろ」
「かれし?」

私が言い慣れない言葉のように口にするとトーマはため息を吐いた。
手が離れて夢から覚めてしまうと怖くなる。

「そんな可愛い事されたら我慢できなくなる」

でも夢が途切れる事はなく、トーマが覆い被さっていた。
段々とぼんやりした意識がはっきりとしてきて、トーマを見つめて数回瞬きをした。

「トーマ?」
「何?」
「おかえり」
「……やっと目覚めたか」

少し呆れたような表情をしているトーマを見上げた。
今日はトーマの家で夕飯を食べる事になってトーマの家で待っていた。
トーマの帰りを待っている間、ついトーマのベッドに寝転がってみたくなって、大好きなトーマの香りに包まれてるみたいで眠ってしまったようだった。

「起こしてくれたらよかったのに」
「寝顔をたっぷり見させてもらったからお礼に寝かせておいた」
「寝顔見たの?」
「うん。本当はあまり見れなかったけど」

トーマの指先が顔にかかる髪を払う。微かに触れる指先がくすぐったい。

「トーマにだったら見られてもよかったのに」
「だからお前はそういう……いいや、そういうところも可愛いから」

軽く唇が触れあった。
ずっと一緒でもしかしたら何度もこんな近い距離で見つめた事もあるかもしれない。でも今までと違うのはその少しの距離もなくして触れ合う事。

「トーマ、好き」

何度だって言える。本当の意味で伝えられる。
トーマの頬に手を添えて引き寄せキスをした。
唇が僅かに離れてトーマも囁くように私に伝えてくれる。
何度聞いても嬉しくて、トーマを抱きしめた。


H23.11.8

伝えられる
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