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「はーい、というわけで笹に飾る短冊を書きまーす!」
「はーい!」
「はいっ」
「あれ、トッキーお返事は?」
「するしないに関わらずやりますからしなくてもいいでしょう」
「駄目だよ、トキヤ。こういうのは最初が肝心なんだよ」
「こういう時に言うのは違うのでは……はい」

僕の家に集合してもらいテーブルを囲んで四人で座っていた。
春歌ちゃんが控えめながらにもトッキーを見つめ、その視線に耐えられなかったのか頷いた。

「何でもいいの?」
「いいよ。寿弁当が全国ナンバーワンになりますようにとか寿弁当の新商品が話題になりますようにとか」
「寿弁当の商品開発会議でもした方がいいんじゃないですか?」
「例えだよ、例え。だから音やん気にせずじゃんじゃん書いて!」
「うん」
「寿弁当……」

あぁ、隣の彼女が真面目な子だということを失念していた。

「春歌ちゃんの願い事を書いていいんだよ」
「はい……ですがやはり寿弁当の今後をお願いしたいです!」

何やらやる気を示すように握り拳を両手に作り胸の前に掲げた。

「春歌ちゃん君って本当いい子だね……よし、寿弁当の未来は僕が背負うからどんな願い事でも書いて!君が書くならどんなことでも叶えるよ!」
「できることとできないことがあるのを認識して下さいね」
「トッキー!!」
「っ!?な、なんですかっ」

前に乗り出し向かいに座るトッキーの両肩を掴む。体勢は苦しいけど気にしてはいけない。

「願いを書いてそれに向かう事が大事なんだよ!いわば抱負!」
「え、そうなの!?」

そういえば短冊を書いていたのか静かだった音やんが声を上げた。
書いた短冊をこちらに向ける。

「「“トキヤの絵がうまくなりますように”」」

読み上げた僕とトッキーの声が重なる。

「そう!音やんが書いた事にトッキーが向かうんだよ!」
「良かった〜自分の抱負書くのかと思った」
「良くありません!余計なお世話です!」
「あ、でもトキヤの絵は味があるからいいのか。靴下ペンギンも好評だったし」
「聞きなさい、音也!」

二人の会話からは離脱し体勢を戻す。

「書けた?」
「はい」

春歌ちゃんに話しかけると書いた短冊をそっとこちらに寄せてくる。

“料理の腕が上達しますように”

「寿弁当の料理はとても美味しいので嶺二先輩が未来を背負われるならわたしも……」

気恥ずかしそうに俯き肩を縮こませる。一瞬我を忘れて抱きしめそうになり堪えた。

「じゃあ一緒に上達していこうか」
「はいっ」

耳元で囁く言うとこちらに笑顔を向けて頷いてくれた。

「あれ、二人ともどうしたの?」

静かになったのがわかり向かいの二人に顔を向けると複雑そうな表情で目を逸らされた。
しまった。いわゆる二人の世界になってしまっていたらしい。

「僕の願い事は四人で遊びに行くことです!ユニット曲の仕事また決まったし親睦を深めよう!」
「仕事と関係なく誘ってくるじゃないですか」
「夏だし海に行きたいよね!」
「いいね!ただし春歌ちゃんの水着姿は見せません!」

不満な声を上げる音やん、声にはしなくても表情には不満が表れているトッキー。そして楽しそうに笑う春歌ちゃん。
こうして騒ぐだけで楽しかった。だから行事の度にここぞとばかりに声かけるからみんなには覚悟してもらおう。辛いこともあるけどこの楽しさも消えることがありませんように。


H25.7.7

重なる願い
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