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「あれ、クップル。春歌まだ帰ってないの?」
部屋の明かりがつき部屋の主の一人、シブヤトモチカが帰ってきた。
「にゃあ」
今のワタシは猫の鳴き声しか発する事ができない。
もう一人の部屋の主、ナナミハルカはまだ帰宅していない旨を伝えるように鳴く。
ハルカは夢中になると時間を忘れて音楽作りに没頭してしまう。音楽を愛し、作る事は咎められない。でもやはり無理はいけない。
「またレコーディングルームにいるのかな?」
きっとそうに違いない。ハルカが出かける前にワタシに嬉しそうに音が生まれた事を話してくれた。その音を形にしているのだろう。
いないハルカを心配するようにベッドを見ているトモチカをジッと見上げる。するとワタシの視線に気付いたのかすぐに目があった。
「クップルも心配?」
「にゃっ」
トモチカは屈んでワタシの頭を撫でる。ワタシが勢よく鳴くと抱えられていた。
「よし、じゃあ迎えに行こう」
「すみません。トモちゃんとクップルに心配をかけてしまって……」
ハルカは案の定学園のレコーディングルームにいた。
驚くハルカに少し怒ってみせるトモチカの様子を見上げていた。
今はハルカの膝の上に座っている。
「う〜ん」
謝るハルカに唸るトモチカ。ハルカはどうやらトモチカがまだ怒っていると勘違いしているようだった。
トモチカは心配はしているけど怒ってはいない。
「にゃあ」
「クップル?」
ワタシはハルカの胸に飛び付いた。ワタシの行動に不思議がるハルカが顔を近づけてきてその頬を嘗めた。
一度嘗めて、間をあけたあとは間をあけずに嘗め続ける。くすぐったいと言いながら笑う声が心地いい。
「クップルも謝らないでほしいんじゃない?」
「え?」
舌を引っ込め向かいにいるトモチカを振り返る。
「春歌はもっと自分の体調管理をすること!食事も睡眠もとらないと倒れちゃうし」
「ですが……」
浮かんだ時に形にしなければその時に掴んだ音を後々再び同じように形にできるかはわからない。
だからハルカにも譲れないものがあるのだとわかる。
トモチカはそれもお見通しのように笑うとハルカの頭に手を置いた。
「だから連絡だけでもして。そしたら様子見にいけるし、何かあったら大変だから」
「あ……はい!」
ハルカはまだ遠慮している部分がある。でも頼ってもいいのだ。
ハルカはトモチカの友達で、トモチカはハルカの友達。
「ありがとう、トモちゃん」
「うん」
ハルカは改めて“友達”を感じたのかもしれない。
「ありがとう、クップル」
ハルカはワタシの背を優しく撫でながら笑った。
ワタシはハルカの頬に顔を擦り寄せ鳴いた。
H23.2.7
友達
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