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夕食後、マサと那月が俺の部屋に来ていた。同室のトキヤはまだ帰宅していない。

「しかしやはり女性を驚かせるというのは気がすすまないな」
「そうですね〜。あまり怖い思いをさせてしまうと泣いてしまうかもしれないし」

那月の言葉にマサは腕を組んで更に考えこんでしまった。
俺も指先を顎にあてながら考えこむ。
明日の授業でパートナーを驚かせるという課題が出された。
何故驚かせなければいけないのかはツッコんではいけない。何せここは早乙女学園。突拍子のない授業内容もあるしこれはまだいいほうだ。
本来二人一組で組むけど俺達はちょっとした事故で四人一組となっていた。作曲家は七海春歌。
春歌は少し内気だけど頑張り屋の女の子だ。でもさすがにいきなり授業の課題とはいえ怖い思いをして驚かせられるのもどうだろう。

「そもそも怖い思いをさせる必要あるのかな」
「でも驚かせるってなると多少なりとも怖い思いをしますよね」
「驚かすは驚かすでも怖いんじゃなくてサプライズ!みたいな感じで喜んでくれる事をしてみるとかは?」

二人の会話に疑問に思った事を口にしてみるとマサと那月は俺を見てから互いに顔を見合わせた。

「何故それに行きつかなかったんだ……」
「そうですね!嬉しい事でも驚かせられますよね」

二人は俺の提案に乗ってくれた。

「では僕の料理を出してみるのはどうでしょうか」
「四ノ宮の料理か……それは驚くな」
「驚くというか困惑するような気がする」
「却下だな」
「駄目ですか……」

残念そうに肩を落とす那月に次はマサが口を開いた。

「三人で何か手作りのものをプレゼントするのはどうだろうか」
「たとえば?」
「そうだな、最近寒くなってきたし膝かけなんてどうだ」
「一晩で作るには難しそうですね」
「俺裁縫とかあんまりやった事ないからほとんどマサに任せる事になっちゃいそう……」
「駄目か」

マサも残念そうに肩を落とした。
せっかく二人が案を出してくれても三人でとなるとなかなか難しい。
何か三人でできるものがないかと部屋を見渡してみると壁に立て掛けられたアコギが目に入った。

「そうだ!」
「どうした、一十木」

立ち上がりアコギに向かっていき手にとる。

「音也くんのアコースティックギターですね」
「三人で春歌に歌を送るのはどう?」
「歌か。一十木のアコースティックギターを使いながら三人でメロディーラインを作って歌詞も書くという事か?」
「うん。一晩だから短いのしか作れないけど春歌に向けた歌を作って歌ったら喜んでくれるんじゃないかな」
「いいですね!当日にアドリブでいれるのもよさそうです」

マサに言われて筆記用具と五線譜を中央のテーブルに広げる。
トキヤが帰ってきて一晩中やるなら学園へ移動しろと言われるまで部屋で歌を作り続けた。
課題も大事だけど春歌を喜ばせたい。きっとマサや那月も同じ気持ちだろう。
作っている今も楽しくて歌う明日も楽しみで仕方なかった。


H23.2.8

作っている今、歌う明日
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