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放課後。普段は解散するはずが私はレンと翔と共に借りた教室にいた。

「何しても驚きそうだから困るよな」

翔は背もたれにもたれ、顔を上に向けながら呟いた。
その様子をからかうようにレンが笑う。

「どうせならオレ達が一斉に彼女に抱き着けばいいんじゃないか?
「抱きっ!?ばっ……うわっ」

レンの思惑通りに翔は反応するとそのまま後ろに倒れた。
やれやれとため息を吐くと今度はレンのからかいの対象が私に向けられる。

「そういうイッチーはどうなんだ?」
「何がですか」
「抱き着くという案」

三人でパートナーである七海春歌を驚かせるという課題について話し合っていた。
本来は二人一組だがとある事故により私達は四人一組だった。
今までも意味のわからない課題はあったが今回も意図がよくわからない。でも課題は課題だ。真剣に取り組まなくてはならない。

「レンも冗談はそのあたりにして下さい」
「そ、そうだぞ!全く、春歌が卒倒したらどうするんだ」

言いながら起き上がった翔が立て直した椅子に座り直した。

「冗談ではなかったんだけどレディの場合倒れかねないね」

残念と言いながらレンは聞く姿勢になった。

「翔は何かありますか」
「何か身につけるものをプレゼントとか思ったけど授業は明日だし無理だよな……」

案も出なくなり沈黙が続く。
彼女は音楽が好きだ。ならばやはり音楽で何かしたほうがいいのではないかという考えが浮かぶ。

「音楽で……」

沈黙を破ったのは三人同時だった。同じ単語を発したのがわかり互いに顔を見合わせて笑ってしまった。

「音楽というのは共通みたいだね」
「トキヤがボーカル、レンがサックス、オレがヴァイオリンで歌作ってみるとかは?」
「いえ、私はピアノを担当します」

私の発言に二人はボーカルはどうするのかというふうに見てくる。

「ボーカルは彼女にやってもらいます。なかなか歌声を聞く機会はありませんからね」
「レディのサプライズプレゼントなのにオレ達にもプレゼントなんて贅沢な気がするけど悪くない」
「そうだな!オレ達の演奏であいつの歌が聞けるなんていいな!」

翔は嬉しそうに立ち上がると楽器を取りに教室の外へ走って行った。

「それじゃあオレもサックスを取りに行くかな」

翔とは違いレンはゆったりとした足どりで教室を出て行った。
一人になった教室で鞄から筆記用具と五線譜を取り出す。
今まで一人でやってきた事を他人とする。そして個人が喜ぶ事を考える。
それは考えていたよりも億劫ではなかった。

やがて二人が戻ってきて作業を開始する。
今はただ明日の彼女の歌声を思い浮かべながらメロディを考えた。


H23.2.9

それは考えていたよりも億劫ではなかった
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