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仕事が終わり携帯を確認すると春歌からメールがきていた。
記されている名前を見るだけで嬉しくなる。

「紅茶?」

メールには紅茶を帰りに買えたら買ってきてほしいと記されていた。
種類とかよくわからないからコンビニにあるティーパックになっちゃうけどいい?と返すとすぐに返信がきた。

“大丈夫です!頼んでしまってすみません。帰って来るの待ってます”

何だか急いだように打たれた文面な気がしたけど待ってるという言葉に更に嬉しくなりながら帰り支度をすませた。


マンションに戻ると春歌がドアの前で待っていた。

「春歌!」

呼び掛けると俯いていた顔をあげて俺の顔を見て笑ってくれた。

「おかえりなさい、音也くん」
「ただいま」

誰かに出迎えてもらえるのはやっぱり嬉しくて、それが大好きな彼女なら尚更嬉しいに決まってる。

「そうだ、ちゃんと買ってきたよ」

コンビニの袋を掲げて見せると春歌は嬉しそうに受け取った。

「ありがとうございます!あの、私の部屋に寄っていってもらいたいのですがいいですか?」
「いいに決まってるよ!むしろ誘ってくれると嬉しいし」

春歌は俺の言葉に安心したように笑むと扉を開いて招いてくれた。

「うわ、なんかいい匂いがする」

中に入ると香ばしい香りがした。

「手洗ってきて下さい。リビングで待ってますから」
「うん」

春歌が鞄を持っていくと言ってくれたので渡して洗面所に向かった。
何でもないやりとりが少しくすぐったくて嬉しい。
手を洗ってリビングに向かうと春歌が紅茶の用意をしていた。
すぐにテーブルが目に入って置かれているものに気がついた。

「クッキーだ!」

駆け寄っていくといい匂いの元がそのクッキーだとわかった。

「先週音也くんにはできたてをあげられなかったので今週は音也くんが帰ってくる時間を狙って作ってみました」
「本当に!?うわ〜嬉しいなぁ」

先週は仕事が終わるのが遅くなって、春歌の部屋でみんなで集まる約束をしてたのに俺は間に合わなかった。
みんなも仕事があってなかなか全員で集まれないだけに残念で、焼きたてのクッキーも食べられなくて余計へこんだ。でも冷めてもクッキーは美味しかったんだけど。

「クッキーを焼き始めたのはいいんですが紅茶がない事を忘れてて……」
「あぁ、だからメールが少し慌ただしい感じだったのか」
「すみません」
「ううん、大丈夫」

春歌がティーカップをテーブルに置いた。
クッキーを早く食べたいけどせめて座ってからにしようとソファーに座った。

「いただきます」
「はい」

お皿からクッキーを一つ手にするとほんのり温かかった。
そのまま一口で食べる。

「ど、どうでしょうか?」
「うん、美味しい!」

春歌は床に座ってトレーを胸に抱きしめたまま俺をじっと見ていて美味しいというと安心したようだった。
クッキーはさくさくしていて先週食べた物と同じように美味しい。容れてくれた紅茶を飲むと身体全体が温まるようだった。

「一ノ瀬さんが今月また皆さんのスケジュールが合いそうと言っていました」
「本当?」

もしかして先週トキヤにみんなとクッキー食べられなくて残念だったとメール送ったからかな?

「その時はカレーを作ろうと思ってるんです」
「そうなんだ!楽しみだなぁ。その時は手伝えたらいいな」
「みんなで作ったらきっと楽しいですよね」
「そうだよね!あ、春歌の紅茶冷めちゃうよ」

二つ並んだティーカップの片方は俺ので少し減っていたけど、春歌のはそのままだ。
俺が隣をポンポンと手で叩いて座るよう促すと、春歌はトレーを床に置いて隣に座った。
そして二人でクッキーを食べる。お互いの顔を見合わせると自然と笑顔になった。美味しいクッキーが更に美味しくなる。
温かさにたくさんの嬉しいが沸いて来る。

「大好きだよ」

だから伝える。
伝えると顔を赤らめて俯いて照れながらも返してくれた。


H23.7.21

温かさと嬉しさ
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