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彼女に部屋に来ないかと誘いの電話をしようとした時、来客を知らせる音が部屋に響いた。
このタイミングでの来客にもしかしたら彼女かもしれないと思ったが、連絡もなしに来る可能性は低い。
そんな思案をしていると聞き慣れた声が聞こえてきた。

「トキヤー?いないのー?」

ため息を吐いて立ち上がり玄関に向かう。軽く叩かれる音も聞こえ、あえて何も言わずにドアを開ける。

「うわっ!?びっくりした」
「音也、貴方は何度言えば来る前に連絡して私の不在や予定を確認するようになるんですか」
「いなかったらいなかったで仕方ないかな〜って思って」
「聞き飽きました」

ドアを閉めようとすると手が差し込まれてしまったため閉めるのを諦めて部屋に戻ろうと背を向ける。

「ポストでもよかったんだけどやっぱり直接渡したかったからさ」

言われて振り返ると剥き出しの写真の束を差し出していた。

「写真ですか?」

音也の手にある写真をよく見てみると見覚えのあるケーキらしきものが見えた。

「うん!先月のトキヤの誕生日パーティーの写真」
「剥き出しで持ってくるとは貴方らしいですね」

音也から写真を受け取り軽く見ていく。
一日中仕事で疲れてはいてもやはり祝われるのは嬉しくて、そこに彼女もいて幸せなひとときだった。

「同じ物が二枚あるようですが?」

束の半分を見たあたりで同じ写真からまたはじまった。

「あ、それなら」
「遅れてしまってすみません!」

音也が言いかけてまた聞き慣れた愛しい声が音也の後ろから聞こえた。

「全然遅れてないから大丈夫だよ」

音也が振り返りつつ言うが私からは後ろの彼女が頭ぐらいしか見えない。

「説明しなさい、音也」


「それで彼女にフォトアルバムを買いに行かせたわけですか」
「違うんです!私も買いたい物があったのでそれなら一緒に買ってきますと言ったんです」
「ありがとう、七海」

春歌と音也を部屋に上げてソファに座っていた。
向かいに座る音也が私の隣に座る春歌に例を言うと、春歌は本当の事だからと首を振った。
そしてちらりと私を上目遣いで見つめてくる。目が合うとぱっと逸らして鞄を開け始めた。

「……それに一ノ瀬さんと色違いにしたかったんです」

小さく呟かれた声でも私にははっきりと聞こえた。
鞄から出されたフォトアルバムは淡い青とピンクの二冊だった。デザインはシンプルだけど色違いなのだとわかる。

「色違いなんだ!可愛いね」

音也には春歌の呟きが聞こえなかったのかアルバムを見るなり声を上げた。
春歌は恥ずかしそうにしながら頷いた。そんな春歌から青のフォトアルバムを受け取る。

「ありがとうございます」
「はいっ」

そして音也が持ってきた写真をアルバムに入れる事にした。
音也もやりたいと言い出し私の分を渡して、私は春歌の作業を見ている事にした。

「やっぱり写真っていいよね。楽しい時間は過ぎちゃうけど見てると思い出して楽しくなる」
「貴方は単純ですね」
「トキヤは違うの?」
「そうですね……。一人でいる時などに見ると反対に淋しくなるかもしれませんね」

発言してから自分が言った事に気がついた。二人共黙ってしまって何てフォローしたものかと考える。
すると春歌が写真の私を指で触れた。

「淋しく感じるのはそれだけ楽しかったって事なんですよね。でも大丈夫です!これからまた一緒に過ごす楽しい日があります」

私に微笑みかける春歌。一緒という言葉が嬉しかった。

「そうだよ!来年の誕生日なんてトキヤが考えつかない事が待ってるんだからさ」
「そうですね」

二人があまりにも笑顔で言うものだから私も笑んでいた。
春歌が写真とアルバムを私に差し出してきて、私は数枚をアルバムに入れていった。

「ですが来年は普通でお願いします」
「うん、わかった」
「絶対わかってませんよね?」

来年も共にいる事が当たり前のように語れる友人がいる。
一緒にいる事を願い、想ってくれる彼女がいる。
私は最後の一枚を手にして幸せを噛み締めた。


H23.9.4

最後の一枚を手にして
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