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もう学校も終わりの時間で、曇り空のせいか今日は太陽も拝めなくて、でもどうにももやもやしてるのは別の理由があった。
校門を出るまでの道を行ったり来たり。何人かに何してるのか聞かれたけど笑ってごまかす。
今日にかぎって一度も顔を見れないなんて。
普段なら朝にでも会えたりするのに。
「火原先輩、お誕生日おめでとうございます」
「えっ!?」
驚いて振り返ると、彼女も少し驚いた顔でそこにいた。
「ひ、日野ちゃん」
「すみません驚かせちゃって」
謝る彼女に首を激しく横に振り、ううん!と否定する。
その様子を見て彼女は笑った。
「良かった、今日一度も会えなくてお祝いの言葉言えないかもって思っちゃいましたよ」
「あ、うん。でも何で知ってたの?」
こんな聞き方するなんて自惚れてると思われるだろうか、と言ってから気がつく。
「前にコンクール参加者の簡単なプロフィールが学内新聞に書いてありましたから」
「そっか」
そう言う彼女の笑みが何だか痛い。もしかしたら他の参加者のプロフィールが知りたくて見たとか…なんて変な事が思い浮かぶ。
知っててくれた、そして祝いの言葉をくれた。それでいいじゃないか。
これ以上を望むなんて、なんて贅沢なんだろう。
「火原先輩の誕生日見て、思わず笑っちゃいました」
「え?」
どうして?と聞き返す俺が気分を害したかのように見えたのか、彼女は慌てて手を振り回し違うと否定した。
「火原先輩らしいなぁと思って。1、2、1、2って元気よく行進してるみたいで」
覚えやすい誕生日と言われた事はあるけどこんな事を言われたのは初めてだった。
笑って話してくれる彼女が嬉しくも照れくさくて、ありがとうを込めて満面な笑みを彼女に向けた。
「ありがとう、日野ちゃん!」
「そんなお礼言われる事してないですよ!それにプレゼントも用意できませんでしたし」
「いいよ、覚えててくれて嬉しいからさ」
始めはただこの日に彼女の顔が見たかった。
そしたら祝いの言葉が聞けて、覚えててくれて。
これ以上は望まないんだ。
ただ笑って君が俺の話をしてくれるだけで、こんなにも嬉しい。
言えない気持ちを飲み込んで、もう一度ありがとうと笑む。
「でも……」
申し訳なさそうに俯いて考え込む彼女。こんな風に悩んでくれるのも嬉しいなんて変かな。
「そうだ!火原先輩今度の休みの日空いてますか?」
「え?う、うん」
勢いよく顔をあげて近付かれて胸が高鳴る。
近付いた顔は俺の返答を聞くと更に笑顔になった。
「じゃあ買い物に行きませんか?そしたら火原先輩の欲しい物わかりますし」
「俺の欲しい物が、わかる?」
その言い方だとまるで知りたかったみたいだ。
彼女も気付いたのか慌てて顔を下に向けた。僅かに赤い気がする。
「考えたんですけど、男の人にプレゼントってした事ないんでわからなくて」
小さく言われたその言葉に吹き出して笑ってしまった。
彼女は赤くなった顔で見上げてくる。
「うん、行こう!」
言ってまた彼女は笑ってくれた。
望む笑顔は眩しくて
知らぬ思いを照らしてる
望まぬ思いが巡るけど
それは望むものなんだと知る
H18.12.12
望む笑顔は眩しくて 知らぬ思いを照らしてる
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