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意識的に腕時計を確認するようにしていると約束の時間が迫っていた。
昨晩から今日は枝織から早めに帰るように言いくるめられた。
『明日は兄さまの誕生日ですから早めに帰ってきて下さい』
昨晩了承しなかったせいか朝まで言い出す始末だ。そのやりとりを思い出し帰り支度を始める事にした。
嫌なわけではないがもう18だ。祝われる歳でもないだろう。
鞄を手にし理事長室から出た瞬間前を阻まれた。
というよりはただ突っ立っていただけのようで前を阻んでいた人物は俺が出てきたのに驚くと後ろに引いた。
「何をしている、小日向かなで」
小日向かなで。
本来は此処天音学園にいるはずのない人物だ。
「冥加さん、こんにちはっ」
「挨拶はいい。どうしてここにいる」
「枝織ちゃんに招待してもらったんです。なので冥加さんのお迎えに来ました」
「招待、だと?」
「はいっ」
小日向は嬉しそうに頷いた。
迎えというのもよくわからないが招待というのは何だ?枝織にという事はまさか……。
「冥加さん、今日が誕生日なんですよね」
問い掛けてもいないのに答えが返ってきた。
複雑な気持ちだった。どうして小日向かなでが俺の事を知る必要があるのかという疑問と誕生日が今日だと知っていて此処にいる事に対する安堵。
嬉しいというのか?
「何をしている」
小日向が開いたままの扉の隙間を覗きこむように見ていた。
声をかけると軽く首を横に振り今度は俺の手元を見てくる。
「帰るところですか?」
「そうだ」
「そうですか」
安心したように頬を緩ませる。
扉の前に立っていた事を思い出しまさかずっとここにいたのかと思った。
「ずっとここにいたのか」
「……はい。少し前まで七海くんが一緒にいてくれたんですけど仕事中なら邪魔したら悪いしと思って開けられなくて」
小日向の俯いていく顔が悪い事や遠慮している態度に感じた。
「いい」
「え?」
「ノックをしろ。いれば返事ぐらいはする」
「は、はい!」
小日向が顔を上げたのを確認して扉を閉め、小日向を横切り足を進める。
すぐにぱたぱたと足音がして小日向が並んだ。
「その緩んだ顔をどうにかしろ」
「冥加さん、酷いです。嬉しいから緩むんですよ」
「何がそんなに……小日向、何をしている」
手に触れるあたたかい感触に驚いて小日向に顔を向けるとやはり笑っていた。
小日向が一歩前に出ると掴まれた手が引かれていく。
「枝織ちゃんが待ってますから早く行きましょう!」
小さな手なのに強く引っ張る。だが嫌な気はしなかった。
「プレゼントも用意してるんです。その時にお祝いの言葉を言わせて下さいね」
学園を出るまでの短い時間。その間小日向は笑顔で引いて行った。
自分の誕生日をずっと憎み続けていた者に祝われるなど皮肉なものだ。
予想などつかない。つくはずもない。
H22.11.14
学園を出るまでの短い時間
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