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星奏学院に来てはじめての誕生日。
ただの幼なじみが彼女になったはじめての誕生日だ。
「別に何か期待してるわけじゃねぇ」
朝飯を食べるために身支度を整えて呟く。
そういやかなでの奴今日について何も言ってなかったな。
いや、だから何か期待してるわけじゃない。今までと変わりない。
「とりあえず飯食いに行くか」
「おはよう、響也!」
「うわっ!?」
部屋のドアを開いた瞬間に横から声がして驚いてしまった。
かなでがいつもと変わりない笑顔でそこにいた。
「響也?」
「あ、あぁ。おはよう、って、何で男子側に来てんだよ」
「律くんに聞いたらいいって言われたから」
了解を得たか得てないかを聞いたわけじゃなく、女が一人でこんなところに……って言っても無駄か。
寮に変な奴はいないとわかっていてもやっぱり安易に来るもんじゃないだろう。
「で、どうしたんだよ。朝から」
これ以上言っても仕方がないと思い用件を聞く事にする。
するとかなでは少し緊張した面持ちで後ろにやっていた両手を前に出した。
「誕生日おめでとう、響也」
「は?」
かなでの両手には小さい袋がありラッピングされている。
一瞬何が起こったか把握できずにそれを凝視してしまった。
「いつ渡そうか迷ったんだけど朝に渡したいなって思って」
わざわざ出てくるまで部屋の前で待っていてくれた理由が嬉しく感じた。
「そ、そうか」
「うん」
気恥ずかしくてついぎこちない受け答えになってしまう。
差し出されたプレゼントをもう一度凝視してから受け取った。
「ありがとな。開けてもいいか?」
「うんっ」
袋を開けて中身を覗くと何か細長い物が入っていた。
それを引っ張りあげるとすぐにストラップだとわかる。
シンプルな淡いブルーのストラップ。
「今まで二人でお揃いの物って持った事ないなって思ったら欲しくなっちゃって…私と色違いなんだけど嫌だった?」
俺がストラップを翳していると寄り添うように色違いの薄いオレンジのストラップが並んだ。
かなでの方はすでに携帯につけられている。
「シンプルだからわかりにくいからいいかなって」
並ぶストラップを嬉しそうに眺めるかなで。
その表情を見たら嫌だなんて言えるわけがない。元よりそんな事言うつもりなかったけどな。
「ちょうどストラップついてなかったし、いいな」
「本当?」
「あぁ」
よかったと喜ぶかなでにどっちがプレゼントされた方なんだかと思う。
でも俺も嬉しかった。今までなら考えられなかった事が自然に思える。
カップルでお揃いの物持つなんてベタすぎるだろなんて思ってたけど悪くない。
「朝ご飯食べに行こう?お腹空いちゃった」
「そうだな」
嬉しそうに歩き出すかなでの背を見て、携帯を取り出すとストラップをつけた。
かなでの誕生日には何をプレゼントしようかと考える。
喜び物をといつも考えるけど次の誕生日は少し違うんだ。
「響也はやくー!」
「はいはい」
携帯をポケットに入れ、かなでの元へと急ぐ。
気持ちが変化すればプレゼントしたいものも変化する。心地良い変化。
H22.3.31
心地良い変化
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