novel top ▲
「かなで」
「えっ!?」
放課後。
外で練習してから音楽室に向かうと連絡をもらっていたため探しに行こうと廊下に出てすぐに見知った後ろ姿を見つけた。
そして声をかけたら驚いた顔で振り向かれた。
「どうした?」
「え、あ、名前呼ばれたから驚いちゃって」
こちらに向き直り、かなでは照れたように笑った。
自然に呼んだつもりだったがやはり不自然だったか。
「あ!悪いとか驚いたとかじゃなくて……驚いたけど、嬉しいよ」
やはり“小日向”と呼んだほうがいいかと思案していると、かなでは首を横に振ってそう言った。
その言葉に安心する。
「律くん、どこかへ行くところ?」
「かなでが探していた楽譜を見つけたから持っていく途中だったんだ」
手にしていた楽譜を差し出すとかなでは喜んで手にしようとする。
だが両手で鞄とヴァイオリンケースを持っているため手が出せない。片手で両方を持つにはかなでの手は小さいだろう。
どうしようか荷物と楽譜を交互に見るかなでが可愛くて笑ってしまう。
すると視線がこちらに戻ってきた先程のように驚いた顔をされた。
「律くんの笑顔は好きだけど何もおかしい事してないのに」
少し拗ねたように言う。
ふっと笑ってかなでの荷物を持つ。その代わりに楽譜をかなでの前に出した。
今度は俺と楽譜を交互に見て荷物を持って悪いみたいな表情をされる。
「いいんだ。俺がこうしたいんだから」
「ありがとう、律くん」
かなでは満面の笑顔で楽譜を受け取って胸に抱いた。
こうして一緒にこの場所で過ごせるのも半年とない。
でもその短い期間は何よりも大切なものとなるだろう。
俺を夢へと導いてくれた女神は共にいてくれる。
H22.3.10
夢へと導いてくれた女神は共にいてくれる
prevU
next