act.3夜明け


泥まみれのまま縁側に倒れ込む。

「だいぶ、泥だらけになっちゃったね。」
「すみません。結局最後まで手伝ってもらって・・・。」
「全然。寧ろ主が気になって休めそうになかったし。」

ゴロンと姿勢を変えて見つめられる。
気恥しさと、心配を掛けているのかと思って少し申し訳なくなり視線を逸らした。

「それじゃぁ、掃除も終わったしお風呂沸かそうか?それとも先にご飯食べる?」

勢いを付けて起き上がる加州さん。
背中に小さな草が所々に付いているを見て無意識に手をのばす。

初めて触った神様は、ビクリと方を震わせてから不思議そうにこちらを見る。

「葉っぱが背中に。」
「え!?」

顔を赤くさせながらワシャワシャと背中の葉をとる。

「や、やっぱり1回お風呂に入った方が良さそうだね。アハハ・・・。」

恥ずかしそうに笑う加州さんを見ていると卑屈になる前の自分を見ているようだった。

疲れて重い体を起こし、そそくさと行ってしまった加州さんを追いかけた。


・・・・・・



昨日頼んでいたお風呂がまさかの温泉になるとは思っていなかった。

加州さんが入っている間に簡単になってしまうけれど、朝ごはんを作る。
梅、塩、ツナマヨのおにぎり。

いつの間にか設置された大きな冷蔵庫や炊飯器、調理器具に洗濯機。
いったいいつの間に・・・。

こんのすけの謎に一人悶々としながら、おにぎりを作り終えて食卓に並べる。
お茶の準備もして座って待っていた。

・・・・・・・・・少し遅い。

おにぎりを作り終えてから30分がたっている。
次第に嫌な予感が頭をいくつもよぎり、早足でお風呂場に向かう。

脱衣所には、まだ着替えが入っていた。
もしかしたら逆上せているのかも・・・。
でも、もし違ったら・・・。
扉を開けるのを躊躇し、腹を括って思い切り開け放つ。

反射的に瞑った目を片方開ける。

湯船の端っこで寝ていた。
肩を軽く叩いてみる。

ポンポン。
ポンポン。

・・・・・・(--;)
お、起きない。
これは、ヤバイ。顔赤いし完全にのぼせてる。
自分より少し身長の高い加州さんを湯船から引きずり出し、介抱してあげる。

お風呂場の前の部屋に移動させてから、団扇でパタパタ扇いだ。


「う・・・うぅん?」

十分後位にようやく目をさました。
「主・・・?」
「お風呂で寝てたんですよ。」
「あー。そっか、暖かくてついつい寝ちゃったのか。」
と、遠くを見つめている。
「な、長風呂は、ダメだって最初に渡した手引書に書いてあったじゃないですか。ちゃんと湯船に浸かったら百数えて出てきてください。」

安心して零れそうになる涙を隠すように俯きながら言うけど声が震えているから絶対バレてる。
段々傍にいるのが辛くなっていく。
起こられるかもしれない。
呆れられるかもしれない。
嫌われるかもしれない。

ムクりと起き上がろうとかする加州さんとは反対に立ち上がる。
そのまま後ろを向いて部屋を出てきてしまった。

「加州さんごめんなさい。」

ポツリと呟いて自分の部屋に閉じこもる。

「どうしよう。」





- 3 -

*前次#


ページ:



ALICE+