act.4休息の後


「うぅー・・・。」

自室の机に額を押しつけて、ぐりぐりと頭を動かす。
「逃げちゃった。逃げちゃったよぉ・・・。
どうしても、イケメンに慣れないなぁ・・・
顔面格差がありすぎて、寧ろ申し訳ない。」

うじうじと情けない声を漏らす。
元々人見知りで、慣れてくるまでは必要以上話せず、臨機応変も勿論出来ない。

それのせいか今までの職場では、決められた事しか喋らないロボットの様だと言われ続けていた。


「絶対やな思いさせちゃったよぉ・・・
どうしたら・・・」

ひとしきり零し終えた時。

キシ・・・キシ・・・

部屋の近くの廊下から音がこちらに近付いてくる。

キシ・・・キシ・・・キシ・・・


音が部屋の前で止まる。
後ろを振り返ると障子に薄らと影が写っていた。

無言のまま数分。
先に口を開くのは、勿論加州さん。

「主?そこに居るんだよね?」

返事はせず代わりに、小さな物音たてて影を見つめる。
障子の向から小さく息を吐く音がした。

「あー・・・。戦いに行ったわけじゃないのに情けない所で、その・・・。心配をさせちゃってごめん。」



そうじゃない。そうじゃないのに。
悪いのも謝らなければいけないのも私だ。
そう思った時には、体が動いていた。
障子を勢いよく開け放ち、加州さんを睨む。

「謝らないでください。悪いのは、私です。私がもっと注意していれば、こんな事には・・・きっと・・・グスッ」

話している途中で謝りたい気持ちと情けない気持ちがこみ上げてきた。
睨んでいた目からは、涙が溢れて視界が歪み、声は震えてしまっていた。


いきなり開けた視界に呆然としていた加州さんだが目の前で泣き出してしまった主に我に帰り焦り始めた。

「え?!な、なんで!?泣かないで主。
あー、ほ、ほらこの手拭い使って。」

目の前に出されたハンカチを受け取って、顔を押さえる。
その間加州さんが背中をポンポンと叩いてくれた。

落ち着いた?と顔を覗きこんできた加州さんに、

「役たたずでごめんなさい。」

ボソりと呟いた。
ハンカチを押し当てたままだったから、声がくぐもってしまっていた。


沈黙が続く。


「主。顔あげて。」

その声におずおずとぐしゃぐしゃの顔をあげる。すると・・・

ビシッ!

おでこに衝撃。
デコピン・・・された・・・。
じんじんするおでこと何がおこったのかと呆然とする。

ムスッとした加州さんの顔が少し近づく。

スッと手を伸ばされて反射的に目を瞑るった瞬間に、これでもかと言わんばかりに髪をワシャワシャとかき混ぜられた。

「まだ、何もしてないのに役に立つ立たない言わない!これから何だから、悲観しない!自分を責めすぎない!俺だって主の支えになりたいんだから、一人で何でもやろうとしないでよ!」

言い終わると同時に手を離して、ニカッと笑う。

「ご飯食べよ!」

先に行ってるからー。と言って戻って行った。
後に残ったのは、髪の毛もじゃもじゃのべそっかき。


部屋の隅に置いてある鏡から自分の姿が小さく写る。

「酷い顔。」

少し笑えて。緩む口元を隠しながら洗面台に向かった。






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