「髪色が戻ってるわ...」

真白いシーツに散らばる青い波筋が、まるで彼女の頬をたどる涙に思えた。

「魔法の効果が効きづらいのかしら...それも、やっぱりルフがないからなの? それとも他に何か...」

なにか。頭の中の細い糸を追う。違和を探る。いや、彼女の場合違和ではなく所謂普通というものを探さなくてはならない。培う経験、常識が当てはまる事象を考える。魔法をかけるという作用が及ぼす影響。当たり前にある反作用。目の前の彼女に、足りないものは?

「......」

腕に抱えた花束をチェストに置いた。彼女の細い髪を梳きながら、小さな頭を撫でてみる。

「...息を、してるのに」

薄く開いた唇から漏れる音が、伝わる体温が。ーー奥歯がかみ合わない落ち着かない感覚を覚えさせる。

「......ぅ...」
(帰りたい場所に、帰るために...)

ピスティの声が囁く。彼女が帰れる保証などどこにもないというのに。
目が覚めた彼女は、未だに夢現を彷徨っていた。


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