喫茶店

次のアポイントまで少し時間が空いたので緋山さんと二人で喫茶店に入った。
「緋山さん何にします?」
「アイスコーヒーで」
メニューも見ずにそう答えて、緋山さんは出された水を飲んでいた。僕もコーヒーでいいか、と思いつつも一応メニューを流し見ていると懐かしいものが目に入った。近くにいた店員さんを軽く手をあげて呼ぶ。
「ご注文お伺いします」
「アイスコーヒーとクリームソーダで」
小学生の頃、たまに連れていってもらった喫茶店で飲んでいたクリームソーダ。懐かしくてつい頼んでしまった。

「クリームソーダって何でしたっけ」
「メロンソーダにアイスのってるやつですよ」
ノートパソコンを取り出して仕事をし始めている緋山さんが尋ねてきたのでメニューに載っていた写真を見せる。
「メロンソーダは子供の頃けっこう好きでした」
「僕もです。でもメロンソーダってあんまり見ないですよね」
大人になってから滅多に飲まなくなってしまったが、見かけると飲みたくなる。
「ドリンクバーにあるくらいじゃないですか?」
「あーたしかに!ドリンクバーにはあるかも」
そんな雑談をしているとすぐに飲み物が運ばれてきた。
「…なんかイメージと違いました」
運ばれてきたクリームソーダは当然メロンソーダにアイスがのっているものではあるのだが、色鮮やかなメロンソーダの上にもこもことしたソフトクリームがのっていてかわいい感じだった。グラスもなんだかかわいい。メニューの写真は記憶と違わないレトロなクリームソーダだったはずだが。
「若い子向けの映え意識なんじゃないですか?」
アイスコーヒーにミルクを入れてストローでかき混ぜている緋山さんが言ったことになるほど、と納得する。
まあ味は変わらないか、と一口ソフトクリームを食べてみるとミルク感が強くて美味しかった。
「このソフトクリームけっこう美味しいですよ」
スプーンに一口ソフトクリームをすくって向かい側に座る緋山さんに差し出すと彼はそのままぱくりと食べた。
「ん、美味しいですね。普通にこのコーヒーの上に乗せて欲しいです」
「コーヒーフロートもあったんじゃないですか?」
クリームソーダの下に書いてあった気がする。
「ほんとだ。次来た時にはこれにします」
緋山さんはメニューを開いて確認している。そんなに気に入ったんだろうか、このソフトクリーム。
「仕方ないのでもう一口あげます」
「コーヒーの上に乗っけてください」
「ダメです。はいあーん」
単に僕が食べさせたいだけなんだけど、緋山さんは怪訝そうな顔をしながらも大人しく口を開けたのでスプーンを突っ込む。あーんとか恋人っぽいじゃないか。

「冷えた……」
「クリームソーダなんて頼むからですよ」
店内は冷房が効いていたのでクリームソーダを飲み終わる頃には身体が冷え切っていた。外に出た瞬間の暑さがなんなら少しありがたいくらいには。
「美味しかったからいいんです!」
「はいはい、どうせ少し歩けば暑くなりますしね」
少し休憩もできたし次の仕事も頑張るか、と二人並んで次のアポイントへと向かった。