はみ出る愛

ある休日の夕暮れ時、今日の晩ご飯は何にしようかなと考えていると何となくかけていたテレビで美味しそうなオムライスが映し出されていた。
「うわ、おいしそう」
隣で同じくテレビを見ていた赤峰さんが呟く。
「今日はオムライスですね」
完全に口がオムライスになってしまったので、材料を確認するためにキッチンへ向かう。卵はあるにしても中のチキンライスの材料はあっただろうか。考えながら冷凍庫を確認すると鶏肉がまだあったので取り出して解凍することにする。ついでにお米をといで水につけておく。
「上にかけるソースは何がいいですか?」
まだ作り始めるには早いから赤峰さんの隣に戻って尋ねてみる。
「うーんさっきのテレビみたいにケチャップがいいです。昔ながらの」
「それならソースは作らなくていいからまだいいですね」
お昼を食べたのも少し遅かったからまだお腹も減っていない。そのままぼーっと二人でテレビを見た。

「はい、自分で好きなだけケチャップかけてください」
あのあと二人で少し昼寝をして(昼という時間でもなかったが)、起きたらちょうどご飯も炊けていたのでオムライスをちゃちゃっと完成させた。薄い卵でチキンライスを包んで完成したオムライスをのせた皿を赤峰さんに手渡す。
「じゃあ緋山さんの分も僕が描きますね!」
「描く?」
「オムライスと言えばこれでしょう!」
腕まくりをして何やら張り切っている赤峰さんがケチャップを手に取った。真剣な表情で慎重に狙いを定めていたのでケチャップで何か描きたいのかと理解して、そっちは赤峰さんに任せて使った調理器具の後片付けをする。フライパンだけ先に洗ってしまって食卓につくと赤峰さんが得意げに皿を差し出してきた。
「こっちが緋山さんの分です!」
受け取るとオムライスを優にはみ出すほど大きなハートがケチャップで描かれていて思わず笑ってしまう。
「っくく、これ豪快すぎませんか」
「なんですか、僕の愛はこんなもんじゃないですよ」
「はいはい、ありがとうございます。冷めちゃうから食べましょう」
「緋山さんが冷たい……!」
不服そうな彼を無視していただきます、と手を合わせる。一口食べてみると、まあまあ良い出来だ。今度はチーズを入れてみてもいいかもしれない。
「ん!おいひいです!」
赤峰さんも一口食べるなり喜んでいたので味は大丈夫そうだ。ほっとして、自分の分を食べ進める。
オムライスなのであっという間に食べ終えて、二人でごちそうさまと手を合わせた。休みの日くらいは洗い物をすると言って聞かない赤峰さんに洗い物を任せて、俺は食後のコーヒーを淹れる。
「ふぅ、美味しかったですオムライス」
「よかった。今度はチーズ入れるか、デミグラスソースのやつでもいいかもしれないですね」
「いいですね!あ、でもそれだとケチャップでお絵描きできないか……」
少し残念そうな赤峰さんが可愛くて笑ってしまう。
「そんなに楽しかったんですか?」
「そうじゃなくて!今度は緋山さんに描いてもらおうと思ったのに……」
「そういうことですか。じゃあ次回はオムライス、赤峰さんが作ってください」
「えぇ!あんなに綺麗に包めないですよ……」
今度はオムライス本体を赤峰さんに作ってもらって、俺はケチャップをかけるだけにしようと思ったが難しそうだ。赤峰さんもたまに料理をしてくれるが、言うほど別に下手じゃない。今日のケチャップのかけ方みたいに多少豪快ではあるが。
「赤峰さんが作ってくれるなら描いてあげますよ」
「えー…、じゃあこっそり練習しておきます」
一緒に住んでいるのにこっそりも何もないがたまには恋人の手料理が食べたい。
「楽しみにしてますね」
気乗りしなさそうな顔をしていた赤峰さんの頬に一瞬だけ触れるキスをする。ぱっと頬を掌で押さえた赤峰さんは少し驚いた後、物足りなさそうな表情を浮かべる。
「それだけですか?唇にしてくれたらやる気出るかもしれません」
現金な恋人に少し呆れながら、今度は彼の望み通り唇にキスを贈った。
彼が作るオムライスに何を描こうか。目を閉じて考えを巡らせながら侵入してきた舌に自分のそれを絡めた。