12月に入りクリスマスが近づくにつれ、街中はライトアップされ賑わいを増していく。
去年までは当然クリスマスとは無縁だったが今年は赤峰さんと過ごすことになるだろう。
彼のことだから張り切ってケーキの予約でもしていそうだと思ってクリスマスの予定について尋ねてみると意外な答えが返ってきた。
「えっ、もうクリスマスですか?!何も考えてなかったです」
晩ごはんを食べる手を止めて赤峰さんはカレンダーを確認している。今月は仕事が立て込んでいて慌ただしかったから無理もない。ちなみに何故俺がクリスマスを意識したかというと近所のケーキ屋の前を通った時にクリスマスケーキ予約受付中のポスターを見たからだ。
「近所のケーキ屋さんはまだクリスマスケーキ予約できそうでしたよ」
「あそこ人気だからすぐなくなってるかと思いました」
「自分で店に引き取りに行かないといけないから近所の人しか頼まないみたいです。この間お菓子買いに行った時に教えてくれました」
可愛らしい雰囲気の店内に気後れしたのは最初だけで、赤峰さん用のおやつを買いに何度か訪れたことのある近所のケーキ屋さん。よろしければ、とクリスマスケーキのチラシを貰ったのを思い出す。
「チラシ貰ってきたのであとで赤峰さんが好きなの選んでください。明日予約してくるんで」
「緋山さんも一緒に選びましょう!」
「俺は別に……」
「緋山さんもあそこのケーキなら食べるでしょ!」
「まあ」
一緒に選ぶと駄々を捏ねる赤峰さんに若干呆れつつ、二人の意見が一致したのはド定番のシンプルな生クリームにいちごが乗ったケーキだった。
師走らしい忙しさで日々は過ぎていき、あっという間にクリスマスイブがやってきた。
赤峰さんにはケーキを取りに行ってもらっている間に出来上がった料理をテーブルに並べる。
赤峰さんのリクエストでチキンではなく我が家はローストビーフだ。初めて作ってみたけれど我ながら上手くいったと思う。
「ただいまー」
シャンパン用のグラスを準備したところでちょうど赤峰さんが帰ってきた。
「あ、モカだめ!ちょっと待って!」
帰ってきた赤峰さんにじゃれつこうとする愛犬を慌てて引き剥がす。せっかくのケーキをひっくり返したら大変だ。
「とりあえず冷蔵庫に入れておきますね」
俺がモカを抱えている間にケーキは無事冷蔵庫へ収められた。そのまま手を洗って戻ってきた赤峰さんがテーブルの上を見て声を上げる。
「うわー!すごい!全部緋山さんが作ってくれたんですか?」
「一応」
ちょうど昨日まで赤峰さんは出張で家にいなかったからその間に準備を進めておいた。
「早く食べましょう!僕、シャンパン開けますね」
待ちきれないと言わんばかりに小走りで冷蔵庫からシャンパンを持ってくる彼に少し笑ってしまった。
「これ、開けるのドキドキするんですよね」
「俺開けましょうか?」
「いえ!大丈夫です」
若干ビビりながら極力自分から離してシャンパンを開けようとしている赤峰さん。
ポン!と音がして栓が抜けた瞬間、びっくりしたのか目をぎゅっと瞑っててちょっと可愛かった。
「「メリークリスマス」」
二人で乾杯する。どこのシャンパンが美味しいのか二人ともよくわからなかったので某有名なシャンパンを選んだが、飲みやすくて美味しいから正解だったかもしれない。
「いただきます!何からいくか迷うな〜」
まだ早い時間なのに食卓についた俺たちを見てそわそわしている愛犬にもいつもよりちょっと良いご飯をあげておく。
「取らないからゆっくり食べなよ…って赤峰さんもですか」
「んえ?」
いつもと違うご飯にがっつくモカを宥めてふと顔を上げると口いっぱいに食べ物を詰め込んでハムスターみたいに頬を膨らませている赤峰さんが目に入って思わず笑ってしまった。当の本人はきょとんとしている。
「料理は逃げないですからゆっくり食べてください。喉詰まりしますよ。」
「すみません、テンション上がっちゃってつい」
赤峰さんはいつも美味しそうにご飯を食べてくれるから作り甲斐がある。味見はしてあるからすでに味のわかっている料理も彼と一緒に食べると美味しさが増す気がした。
テーブルの上の料理をほぼ完食して、赤峰さんお待ちかねのケーキを冷蔵庫から取り出す。切り分けるためにキッチンで一度箱から取り出すとサンタの砂糖細工がちょこんと乗った可愛らしいケーキが現れた。
「僕、サンタさん食べていいですか?」
「いいですよ。俺には甘過ぎますし」
後ろから覗き込んできた赤峰さんのリクエスト通りに切り分けてサンタが乗った部分は彼に渡す。自分の分は少し小さめに切り分けて残りは冷蔵庫に戻しておく。
「やっぱあそこのケーキ屋さんはハズレないですね」
早速食べ始めている赤峰さんが満足そうに頷く。一口食べてみると甘過ぎない生クリームがスポンジとよく合っている。最近高騰しているらしい苺もふんだんに使われていて値段以上の満足感だ。
「ん、美味しいですね」
「ふふ、緋山さんもここのは好きですもんね」
甘いものはあまり好んで食べないけれど赤峰さんと暮らし始めてからは彼の影響で以前より甘いものを食べる機会が増えたように思う。
「赤峰さんと一緒にいるから食べてるだけですよ」
事実をそのまま伝えただけなのに、赤峰さんは嬉しそうに笑った。
◇ ◆ ◇
ごちそうとケーキをたらふく食べて、二人ともお風呂にも入ってリビングでのんびりしているところで緋山さんにプレゼントをまだ渡していないことを思い出した。
自分の部屋に隠していたプレゼントを持ってリビングに戻る。
「緋山さん、メリークリスマス。これプレゼントです」
ラッピングされた袋を手渡すと緋山さんはびっくりしていた。
「ありがとうございます。すいません、俺なにも用意してなくて……」
「緋山さんはごちそう作ってくれたじゃないですか!十分どころか豪華すぎましたよ」
僕の為に作ってくれた、と自惚れているクリスマスディナーは想像以上に豪華できっと時間をかけて準備をしてくれたのだろう。
「むしろ僕のプレゼントが大したことなくて申し訳ないんですが……」
「赤峰さんがくれるなら何でも嬉しいですよ」
さらっとこちらがきゅんとすると一言を言いながら開けていいか尋ねてきた彼に頷く。
「あ、手袋だ。あったかそう」
「緋山さん、モカの散歩の時ちゃんと手袋して行かないから」
僕があげたやつならちゃんとしてくれるかなという期待を込めて自分には買わないような少し良い手袋を選んだ。
「ありがとうございます」
少し照れくさそうに笑った緋山さんの手を取る。
「緋山さんの綺麗な手がしもやけになったら困りますから」
「大袈裟ですよ。そこまで寒くないですし」
「ほらそうやってすぐ強がるから」
「強がりじゃないですよ。でも、これは明日からちゃんと使います」
緋山さんの指が僕の薬指にある指輪をそっと撫でた。
ふと、こちらを見た彼と目が合う。熱を含んだ視線に僕は何も言わずに彼の手を引いて寝室へ向かった。
「んっ、」
「そんなに指締め付けないでください」
「だって、も、はやく」
「まだです」
今月は仕事が忙し過ぎてゆっくり身体を重ねる時間もあまりなかったから、じっくりと時間をかけて指で緋山さんの中を慣らす。
「あっ、ん、イきそ」
「我慢しなくていいですよ、ほら」
「っ!」
前を扱くと緋山さんはすぐにイった。手にかかった白濁を舐めとろうとするとそれよりも先に慌ててティッシュを取った緋山さんに拭かれてしまう。
「なんでいつも舐めようとするんですか」
「なんとなく」
そういう自分は僕が口に出してしまった時、全部飲むくせにと思ったがからかうと怒られそうなのでやめておいた。
「も、早くください」
「あっちょっと、待ってください」
クリスマスという特別な雰囲気にあてられたのかいつもより積極的な緋山さんが僕の上に乗り上げてくる。
「ん、くすぐったいですって」
押し倒されて胸の突起を舐められる。残念ながら僕の乳首は未開発なので緋山さんのように感じることはできないけど、緋山さんがぺろぺろとそこを舐める姿を見て興奮してくる。反応を示さない僕に飽きたのか緋山さんは身体を起こして、今度はすでに硬度を増して勃ちあがっているそれを口に含む。直接的な刺激に身体がびくりと反応した。喉奥まで咥えられてじゅっと吸われる。視覚的な刺激も相まってあっという間に限界が訪れる。
「ん、緋山さんイきそうだから離して」
そっと頭を撫でると素直に口を離してくれたのでベッドサイドの引き出しからゴムを取り出して装着する。せっかくなのでもう一度寝転んで緋山さんを上に乗せる。
「緋山さんが挿れてください」
「えっ」
「早くって言ってたじゃないですか」
騎乗位の体勢で腰を掴んで後孔に自身の先端をあてがうと緋山さんの腰がぴくりと揺れた。
「あっ」
「ほら、そのまま腰落としてください」
腰を撫でて促すと声を出すのを我慢しているせいで、くぅんと喉を鳴らしながら緋山さんは僕のそれを飲み込んでいく。別に声を出しても大丈夫だと毎度のように言っているが、恥ずかしいのか理性のあるうちは頑なに声を出すのを我慢しようとする緋山さん。子犬のように喉を鳴らしているのもかわいいからそれはそれでいいけど。
「あともう少しです」
「も、無理」
「何言ってるんですか」
下から少し突き上げると僕の腹についた手に力が入った。反射的に腰を浮かせようとした緋山さんの腰を引き寄せて奥まで挿入する。
「あっ!おく、」
「っ、緋山さん力抜いて」
ぎゅっと締め付けられて息を詰める。宥めるように背中を撫でるとそれにも感じてびくりと身体を震わせる緋山さん。しばらく何もせずに我慢しているとようやく中に僕のモノが馴染んでいった。快感に潤んだ瞳で僕を見下ろした緋山さんに唇を塞がれる。薄く唇を開けば隙間から彼の舌が侵入してきた。同時に自分で腰を揺らし始めた彼の口から嬌声が漏れる。
「ん、ふ、あ」
気持ちよさそうに顔を蕩けさせる緋山さんを見上げているのも悪くはないが、ゆるゆるとした彼の腰の動きでは僕の方が物足りなくなってきたので身体を起こして正常位まで一気に持っていく。
「あぁっ!」
「ふ、すいません僕がもう限界です」
中に挿れたまま体勢を変えたから彼の好いところを僕のそれが擦り上げてしまったらしい。軽くイった彼にはお構いなしで腰を打ちつける。
「あっ、あっ、や、イくっ」
「っく、どうぞ。何回でもイってくださいっ」
「あぁぁっ!っ、あ?!や、まだイって」
「だから言ってるじゃないですかっ、何度でもイっていいって」
中だけでイった緋山さんの内側が蠢く。搾り取るような動きに耐えながら律動を続けると緋山さんは快感に溺れ始めて声も我慢できなくなっている。
「あっあ、ぅん、や、たすけ」
彼をそんな状態にしているのは僕だというのに手を伸ばして助けを求めてくる緋山さんにどうしようもなく加虐心が煽られた。
「ふふ、緋山さん気持ち良さそう」
「やっ、きもちい、の、終わらなっ」
「イきっぱなしですもんね」
「や、も、むり」
早くイってくれと懇願する涙でぐちゃぐちゃの顔にぞくぞくして僕も彼の中で欲を吐き出した。自分にこんな趣味があったなんてと若干賢者タイムに入りながら自身を抜くと、ゴムを彼の中に置き去りにしてしまった。置き去りにしたゴムからどろりと溢れる白濁がまるで中出ししたように見えてしまって、僕のそれはあっという間に元気を取り戻す。
「んっ、つかれた…って赤峰さん?」
「すみません、もう一回」
「えっ、あっっ!?ちょっと、もうむりっ」
「ごめんなさい、あと一回だけ付き合ってください」
「やっ、も、っ〜!」
あと一回と言いつつそのままニ回はベッドで、シャワーを浴びながらさらにもう一回致してしまって、寝室に戻ると緋山さんは半ば気絶するように寝てしまった。
その頃にはすっかり日付も回っていて、明日起きたら抱き潰してしまった彼の機嫌が悪くないことを祈りつつ、眠る彼の耳元でもう一度メリークリスマスと呟いた。