消せないメッセージ

今日は赤峰さんが会食で夜出かけているから家に一人だ。夕食はうどんを作って簡単に済ませて、早々に風呂にも入り、寝る支度を済ませる。
赤峰さんの帰りを待っていてもいいけどなんだか今日は疲れてしまった。
先に寝ていようと風呂に入る前に枕元の充電器に繋いでおいたスマホを手に取ると留守電が残っていた。
「あれ」
履歴を見ると赤峰さんからで電話を取れなかったことを申し訳なく思いつつ、ベッドに寝転んで留守電を聴く。
ーあ、もしもし、赤峰です。もう寝ちゃいました?僕は今から帰ります。起こしちゃったらすみません。じゃあ。
なんとなく赤峰さんらしいメッセージに思わず笑みが溢れる。その留守電は10分前のものだったから今頃電車に乗っているかもしれない。そう考えて折り返しはしなかった。
普段あまり電話をすることがないから電話越しの彼の声が新鮮でもう一度留守電を再生する。
もう帰ってくるなら待っていよう、そう思ったはずなのに留守電に残る声に耳を傾けたまま眠りに落ちてしまった。

「緋山さん、ただいま」
「ん、おかえりなさい」
ベッドに潜り込んできた赤峰さんの唇が頬に触れる。頭を撫でられて心地良さに目を瞑ると今度は唇にキスが降ってくる。侵入してきた舌がじっくりと口内を荒らして、口の端から唾液が滴る。
離れていく唇を名残惜しく思って彼に手を伸ばしたところで意識が浮上した。
「緋山さん?」
目を開けると目の前に赤峰さんの顔があってぱちぱちと瞬きをする。
さっきまでと違って、ジャケットを脱いだだけのスーツ姿でベッドに手をついて俺を覗き込む赤峰さんを認識して寝起きの頭がようやくついてくる。
「あ、寝てた……」
夢の中でも赤峰さんに会っていたから混乱してしまった。
夢と混同して掴んでしまった彼の腕を離す。
「ごめんなさい、やっぱり起こしちゃいましたね」
「ん、大丈夫です。本当は帰ってくるの待っていようと思ってたんで」
軽く触れた唇からは仄かにアルコールの香りがした。
起き上がろうとすると赤峰さんに肩をそっと押されてベッドにぽすりと沈む。
「先寝ててください」
「でも」
「いいから」
優しく頭を撫でられて夢と現実が交錯する。
疲れからかすぐにまた睡魔が襲ってきた。
「あ、ちょ、緋山さん」
「一緒に寝ましょ……」
赤峰さんの腕を引いてベッドへ引き摺り込む。
「僕、まだ着替えてないんですけど」
口ではそう言っているものの、彼をベッドに繋ぎ止めるために絡めた指先はきゅ、と握り返された。
「いいじゃないですか、おれ、ねむい……」
今にも手放しそうな意識をなんとか手繰り寄せてそれだけ口にする。
「だから先寝ててください、ってあぁ…寝ちゃった」
目を閉じて夢うつつで赤峰さんの声を聴く。
「今日だけですからね」
留守電の声より甘い響きに包まれて、今度こそ眠りについた。