Cola

「あっつ……戻りました」
猛暑日の昼下がり、次の打合せ場所が赤峰さんの事務所からの方が近かったので、少しお邪魔してノートパソコンで仕事をしていると緋山さんが外から戻ってきた。
「お邪魔してます」
「紫ノ宮さん、いらしてたんですね」
コンビニのアイスコーヒー片手に戻ってきた緋山さんは汗だくだ。この後外に出るのが憂鬱になってくる。
「おかえりなさい。外、そんなに暑いんですか?」
今日は一日事務所で仕事だと言っていた赤峰さんがそう尋ねると、緋山さんはうんざりとした表情になった。
「暑いなんてもんじゃないですよ。今日は外出ない方がいいです」
私はこの後出ないといけないんだけど、と思っていると緋山さんが私の座っている机に先程持ち帰って来たアイスコーヒーを置いた。
「よければどうぞ」
「ありがとうございます。でも緋山さんが飲むんじゃ」
コーヒーを一つしか持っていなかったので心配すると緋山さんは首を振った。
「それ赤峰さん用に買ってきたんで大丈夫です」
「え?僕のコーヒー…」
赤峰さんが項垂れていると緋山さんは手に持っていたビニール袋からペットボトルを取り出し、それを赤峰さんのデスクに置いた。
「赤峰さんはこれでも飲んで下さい」
「コーラ?珍しいですね、緋山さんがジュース系買ってくるの」
「あんまり暑いから炭酸飲みたくなっちゃって。昼間からビール飲むわけにも行かないし」
そう言いながら緋山さんは駆け寄ってきた愛犬、モカを撫で回している。
「しかも生ペプシ。普通のと何が違うんだろう」
キャップを回して赤峰さんが一口飲む。最近クラフトコーラとか流行っているからそれ系なんだろうか。
「どうです?」
「うーん、ちょっと味が違うような…?でも最近飲んでないからいまいち違いが……」
赤峰さんが首を傾げていると緋山さんはキャップが開いたままのペットボトルを奪ってごくごくと勢いよく中身を飲む。
「っはぁー、生き返る」
美味しそうに飲むな、CMに出られそう。なんて思いつつ頂いたアイスコーヒーを一口飲んで仕事に戻る。
「俺もいまいち違いはわかんないっすね」
「ですよね?何か美味しい気はしますけど」
そんなことを言いあいながら仲良く一つのコーラを飲み回しているお二人にこっちは胸焼けだ。
仕事を早々に切り上げてパソコンをバッグにしまい、立ち上がる。
「そろそろ約束の時間なので失礼します」
「もうですか?」
「またいつでもここ使ってくださいね」
「…一応僕の事務所なんだけど」
少し見ない間に随分と距離が縮まったような気がする二人と、今日も可愛い一匹に見送られて事務所を出る。
「コーヒー、ごちそうさまです」
手に持った飲みかけのアイスコーヒーを少し上げて挨拶すれば緋山さんはにこりと笑った。