真夏日が続く夜、どうしてもアイスが食べたくなって緋山さんと二人で近くのコンビニまでの道のりをだらだら歩いていると隣で急にぺち、と何かを叩く音がした。
「あ、逃した」
自分の腕を叩いた緋山さんはそう呟いてどこかを見ている。
「どうしたんですか?」
「腕に蚊がとまっていて…これはたぶん刺されましたね」
嫌そうな顔をしながら緋山さんは自分の腕をまじまじと見ている。
「大丈夫ですか?」
「まだなんとも」
僕も緋山さんの腕を見てみるけど今のところとくに赤くなったりはしていなかった。
「刺されてないといいですね」
月並みなことしか言えなかったが、とりあえず行き先を変更してドラッグストアでアイスと虫刺され用の薬を買っておいた。
「やっぱり刺されてました」
家でアイスを食べながら緋山さんは僕に腕を差し出した。ぷちっと赤く腫れている。
「うわぁ、痒そう。これ塗っといたほうがいいですよ」
先にアイスを食べ終えていたので、買ってきた虫刺され用の薬を開封して塗ってやる。
「刺した蚊を逃したのが悔しいですね」
塗りながらそう呟くと緋山さんはきょとんと首を傾げた。年上男性だが妙にかわいく見えてしまうのは惚れた欲目だろうか。
「だって緋山さんの血を吸ったんですよ」
僕が代わりに叩き殺してやりたかった、と大袈裟に悔しがると緋山さんはくすくすと笑った。
「蚊にまで嫉妬しないでください」
食べ終えたアイスの棒をゴミ箱に捨てながら呆れられる。戻ってきた緋山さんは僕の隣に座ると赤く腫れている自分の腕をまじまじと見た。
「刺されたとわかると痒く感じてきますね」
「掻いたらダメですよ。痕残っちゃいます」
掻かないように刺された方とは反対の腕を掴むと緋山さんは僕の方を向いた。思ったより近かった顔に思わずキスをする。
「ん、なんですか急に」
文句を言われたが構わずもう一度唇を塞ぐ。
「痒みを感じないように気を紛らわせるかな、と」
もっともらしい理由をつけながら彼のTシャツの裾から手を侵入させると緋山さんはため息を吐いた。
「なんですかそれ」
それでも抵抗はされなかったので良いように解釈して肩をそっと押し、彼をソファに押し倒した。