輝くネオン(R-18)

「うわ、明日の朝まで運休ですって」
赤峰さんと日帰りの出張へ行った帰り、天候不良で新幹線が翌朝まで運休となってしまった。
「仕方ないですね。今日はこっちで一泊しましょう」
そう言って赤峰さんは愛犬のモカを預かってもらっている明墨先生へ電話をかけ始めた。日帰りの予定だったが念の為、と先生に預けてきてよかった。
赤峰さんが電話で先生と話している間に今日の宿を探してみるが近場のホテルはどこも満室になっていた。俺たちと同じような人たちが慌てて取ったのだろう。完全に出遅れてしまった。
「モカ、ミルと仲良くしてるみたいなので全然大丈夫だそうです」
飼い主としては少し寂しいですが、と泣き真似をしながら電話を終えた赤峰さん。ひとまず愛犬の心配はいらないようなので自分たちの心配をしなくてはならない。
「ホテルどこも満室みたいです。どうします?」
「ですよねぇ。とりあえずご飯でも食べますか」
新幹線の駅近くじゃなければまだ空きがあるかもと一縷の望みをかけて、繁華街へ出る。しかし駅を出た途端、ひどい雨に襲われてしまった。今日は閉まっている飲食店の軒先で雨宿りをしながら途方に暮れる。
「あ、僕いいこと思いつきました!」
最悪ネットカフェに避難かな、などと考えていると赤峰さんがそう言って俺の手を引いた。
「こっちです!」
手を引かれるまま、雨の中を駆け抜ける。少しだけ走ってすぐに立ち止まった赤峰さんの背中にぶつかってしまった。
「うっ、ちょっと急に立ち止まらないでください」
「すみません。ちょうど看板が見えたので」
赤峰さんが指差した看板を見上げるといかがわしいライティングで囲まれたホテルという文字が目に入ってきた。
「えっと」
「ほら、さっさと入っちゃいましょう!」
所謂ラブホテルを前に躊躇する俺とは対照的に赤峰さんは俺の手を引いたままずんずん中へと入っていく。
「あ〜やっぱみんな考えることは一緒か〜……」
タッチパネルを操作して部屋を選んでいる赤峰さんがそう呟いたのでまさかここも満室かと思ったが、すぐに彼の手にはレシートが握られてきたのでそうではなかったらしい。
「高い部屋しか空いてなかったのでたぶん豪華です」
「というか男二人で大丈夫なんですかね」
「前にも泊まったじゃないですか」
あの時は不可抗力というか、なんなら俺はほとんど正気ではなかったのですっかり忘れていたけど確かに泊まったことはあった。まあネカフェよりはいいかと自分を納得させて、赤峰さんへ続いて部屋へ足を踏み入れた瞬間やっぱり帰りたくなった。
「なんというか」
「落ち着きませんね……」
部屋は綺麗で広かったが西洋風の室内には大きなベッドが真ん中にあり、しかも天蓋付きだった。なんならシャンデリアまである。部屋を取った赤峰さんもここまでとは思っていなかったのか若干引き気味だ。
「ま、まあ広々寝られそうですし!とりあえずご飯でも頼みましょうか!」
結局夕飯を食べ損ねていたのでルームサービスを頼むことにした。食事に力を入れているホテルだったのか思ったよりルームサービスが充実していて、頼んだそれが部屋に届く頃には入った瞬間の後悔も薄れてきた。
食事を終えてバスルームを覗いてみるとまあでかいバスタブだった。
「せっかくなのでお湯張りますね」
風呂の大きさに思わず声を上げた俺の様子を見にバスルームへ来た赤峰さんに一応声をかけるが、本人はアメニティに興味津々だ。
「入浴剤もありますよ。ローズの香りですって」
「じゃあそれ入れましょう」
もうどうにでもなれ、という気持ちで答えると赤峰さんが目を輝かせた。
「一緒に入ります?」
「え、さすがにそれは」
「いいじゃないですか。せっかく広いお風呂だし」
たしかに男二人で入っても余裕がありそうなくらい大きな風呂だ。しかし一緒に風呂に入るだなんてそれこそ赤峰さんに抱き潰されて俺の足腰が立たなくなったときくらいだから何だか気恥ずかしい。
「普段シャワーで済ませがちですし。二人でゆっくり入りましょうよ」
おねだりモードの赤峰さんは俺より背が高いはずなのになぜか上手に上目遣いで俺のことを見てくる。そして俺はそれに勝てた試しがない。
「じゃあ俺先に入って身体とか洗ってるんで赤峰さん後からどうぞ」
「やった!」
泊まりが決まった瞬間にコンビニで調達した下着とバスローブだけ持ってバスルームへ戻り先にシャワーを浴びる。途中バスタブにためていたお湯を止めて入浴剤を入れるのも忘れない。
全身洗い終えてバスタブに身体を沈めたところで赤峰さんがちょうど入ってきた。
そのまま赤峰さんもシャワーを浴び始めたので先に広い風呂を堪能することにする。
すぐに赤峰さんもシャワーを終えて隣に来た。贅沢に張ったお湯が溢れていく。
「ふー気持ちいです」
「たまには湯船に浸かるの大切ですね」
二人で足を伸ばして入っても余裕があるくらい広い湯船は快適だ。いつのまにかぴったりと横に座った赤峰さんがこてんと頭を俺の肩に預けてくる。今日は甘えたい気分なんだろうか。
そのままとくに何を話すでもなくゆったりとした時間が流れた。
そろそろのぼせそうだし上がろうか、と思った瞬間赤峰さんに名前を呼ばれる。彼の方を向くと唇を塞がれた。首の後ろに腕を回されて、舌が侵入してくる。水音が浴室に響いた。
背中に回った手が徐々に下降していき、お湯の中で彼の指が後孔を撫でた。
「んっ」
「あれ」
思わずそれにぴくりと身体を震わせると赤峰さんに顔を覗き込まれる。
「もしかして自分で弄りました?」
「だって、そういうことかと」
ラブホで一緒に風呂まで入って抱かれないわけがないだろう。さすがにそこまで鈍感ではない。準備したことを白状すると赤峰さんは嬉々としてそこに指を挿入してきた。
「あっ、ちょ、待って」
「え?なんでですか?」
「ここでは、ちょっと」
「ああ、たしかに。緋山さん顔真っ赤です」
のぼせる前に出ましょうと言われて、こくこくと必死に頷いた。顔が赤いのは別の理由のほうが大きいが熱くてのぼせそうなのには違いがないので手を引かれるまま風呂を出る。
バスタオルで身体を雑に拭ってすぐにベッドまで連れていかれた。押し倒されて唇を塞がれる。舌を絡め取られている間に赤峰さんの髪からぽたぽたと水が落ちてきて、握りしめたままだったバスタオルで思わず拭う。
「すみません、冷たかったですか?」
「いえ、でも赤峰さんが風邪引いたら嫌なので」
そのままごしごしと髪を拭うと赤峰さんはくすぐったそうに笑った。腕を引かれて身体を起こすと今度は赤峰さんが俺の髪を拭いてくれる。
「焦りすぎました」
「別に逃げませんから。ゆっくり食べてください」
わざと煽るように彼の鎖骨に唇を寄せて軽く吸うと、薄ら跡が残った。それに満足してそこに軽くキスを落とせばまたベッドに押し倒された。
「そんなに煽られたらゆっくり味わえません」
仕事中はいつも余裕の笑みを崩さない彼の余裕を奪っているのが自分だと思うと満たされる。
この先余裕を奪われるのはきっと俺の方だけど。

ぱん、ぱんと一定間隔で腰を打ちつけられ、肌のぶつかり合う音が部屋に響く。
「んっ、ん、う」
「ラブホなんですから、声我慢しなくていいですよ」
「でも、っあ!」
四つん這いの体勢で後ろから挿入され、自分の腕に口元を押し付けて声が出ないようにしていると赤峰さんにぐいと顔を引き寄せられた。
ぴったりと背中にくっつかれて頭を片手で引き寄せられた体勢で、それでも赤峰さんは律動を止めない。
「ん、んん、」
「ほら、口開けて」
耳元で囁かれて、唇の隙間から彼の指が口内に侵入してくる。
「舐めて」
甘い声で囁かれて、強請られるまま彼の長い指に舌を絡める。
「はぁ。えっちですね。正面から見たかったなぁ。…あ、そうだ」
何かを思いついたらしく、赤峰さんはゆるゆると腰を動かしたまま天蓋付きベッドを覆っていたレースカーテンへと手を伸ばした。そしてそれを勢いよく開ける。
「緋山さん、前見て」
赤峰さんの指を食みながら顔を上げるとベッドの横には大きな鏡があった。そこにはだらしのない顔をした自分と意地悪な笑みを浮かべる赤峰さんが写し出されていた。
「やっ」
思わず顔を背けるが人差し指は俺の口に入れたまま、顎を掴まれて前を向かされる。
「ちゃんと見ててください。僕に食べられるところ」
そう言って舌舐めずりした赤峰さんがあまりにも色っぽくて、つい後ろを締め付けてしまった。
「くっ、指、噛まないでくださいね」
そう言うと、赤峰さんは空いている方の手で俺の腰をがしりと掴んだ。そのままがんがんと腰を打ちつけられる。
「ん、あっ、あ、あ、あぁ、っ!」
赤峰さんの指が入ってるせいで口を閉じられなくて、腰を打ちつけられる度に嬌声が漏れる。快感でぼんやりしてきた頭のまま鏡に目をやると、先程よりもだらしない顔で涎を口の端から垂らしながら赤峰さんを受け入れる自分がいた。そんな自分の姿にすら興奮して赤峰さんの熱いそれを締め付ける。
「は、は、気持ちいいですね。僕、もう、イきそっ」
「ん、や、らめ、いく、っ!あっ!」
切羽詰まった表情の赤峰さんが俺の口から指を抜いて、両手で腰を掴む。
「あっ、あ、あぁっ、おれ、も、いくっ」
「ふっ、じゃあ一緒にイきましょうか」
「あ、そこっ、だめ、あ、あっ、あ!〜〜〜っ!」
「くっ」
感じるところを何度も突かれて絶頂する。同時にイった赤峰さんも声を漏らしながら俺の中に欲を吐き出した。びく、びくと身体を震わせながら快感の波に飲まれていると赤峰さんが挿入したまま体勢を起こした。肩を掴まれて一緒に身体を起こした俺も膝立ちのような体勢になる。
「は、は、後ろだけでイったんですか?」
甘さを含んだ声で囁きながら赤峰さんが俺の陰茎に手を伸ばした。彼のせいで前を弄られなくてもイけるようになってしまった俺のそこはとろとろと先端から白濁液を溢れさせている。
「ん、や、まって」
「ちゃんとイかせてあげますから」
「あっ、やめ、んっ!」
自分の出したそれが潤滑剤となってくちゅくちゅと卑猥な音を立てながらそこを扱かれる。もうイってるのにさらに絶頂へと追いやられる。
「あっ、あ、あ、いくっ、イっ、!」
びくんと身体が跳ねて、びゅくりと先端から勢いよく精液が飛び出た。
「は、」
「上手にイけましたね」
まるであやすかのように頬を撫でられて心地よさと疲労感に瞼が下りてくる。でも中に入ったままの彼のモノがそのまま眠ることを許してはくれなかった。ずん、といつのまにか固さを取り戻していたそれで突き上げられて飛ばしかけていた意識が戻ってくる。
「あ?!」
「すみません、もうちょっと付き合ってください」
先程までの意地悪な表情はどこへやら。眉を下げた赤峰さんと鏡越しに目が合う。申し訳なさそうな表情をしながらも打ちつける腰を止める気はないようで、そのまま俺は何度も絶頂へと追い立てられるのだった。
結局赤峰さんの体力が尽きるまで抱かれて、もうへとへとでベッドへ沈んだ時に赤峰さんが寝室に鏡置こうかなぁと呟いたので眠い目をかっぴらいて睨みつけた。
「置いたら一緒に寝ませんからね」
俺の勢いに押されて赤峰さんはこくこくと必死に頷き、俺の機嫌を取るように腕枕をしながら俺が寝るまで髪を撫でてくれていた。
こういうホテルでたまになら許してもいいが、自分の痴態を見ながら抱かれるなんてしばらく御免だ。