泣き虫ハニー
「竹谷せんぱ〜いっ…!」
「ああもう、ほんとお前は泣き虫だな〜。」
一学年上の大好きな先輩。一年の頃から、貴方だけを見ていた。泣き虫な私を、嫌な顔ひとつせず世話をしてくれた。今日も、泣き虫な私は顔を涙でぐしゃぐしゃにし、先輩の名前を呼んだ。先輩と話をしていた尾浜先輩はぎょっとした顔をしていたけれど、竹谷先輩はいつもの様に笑って、私の頬を両手で包み込み、覗き込んだ。眩しく見えたその笑顔を見つめ、私はまるで赤子のように笑った。
元気が出るおまじない。それは、二年生の時に言われた言葉。
「みおが泣いていたら、俺が笑顔にさせてやるから。」
眩しかった。輝かしいその笑顔が、眩しくて、私は何度も胸を高鳴らせた。先輩はきっと、私のこの気持ちには気付いていない。意外にも鈍感な人だから。止まらない涙を優しく拭ってもらっていれば、尾浜先輩が心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫?」
「…は、い。」
「勘右衛門は、あんまり接触したことないんだっけ?」
「うん、話には聞いてたけど。五年い組の尾浜勘右衛門。よろしくね、白石さん。」
「え、名前…。」
「だって、有名だもの。」
名前を呼ばれたことを疑問視していれば、尾浜先輩は有名だと言って、優しく微笑んだ。有名と言っていいものかわからないが、確かに一年生の子たちにも「泣き虫で有名な、くのたま四年生の白石みお先輩。」とこの間、叫ばれた。泣き虫で有名なのは、嫌だけども…。ふと、彼の顔を見上げる。尾浜先輩と談笑していて、笑顔が眩しい。
泣き虫でも、先輩がこの涙をとめてくれるのなら。かち、と視線が合う。
「どうした?みお。」
「…何でもないです。竹谷先輩、お昼一緒に食べたいです!」
「お、いいぞ!勘右衛門、いいか?」
「いいよ〜。兵助も何も言わないでしょ。」
「そうだよな。よし、みお!食堂に行くぞ!」
「はい!」
「(…あの距離感で恋仲じゃないのは、俺が可笑しいのかな?)」
彼が涙を拭ってくれるなら、私は一生泣き虫でもいいと思ってしまうの。
彼の眩しい笑顔に、目を細めた。