「ただいまー!」
「お邪魔します」
「って言うても誰もおらんけどな!」
わはは、と笑う謙也に軽く蹴りを一発いれた。緊張が一気に吹き飛んだ。
部屋に恐る恐るはいると少し散らかっているが無駄な物はなく広い方の部屋だった。
「ほな連れてくるからまっとってや」
どうやらイグアナは別の場所にいるらしく部屋に一人になる。辺りをきょろっと見回すと消しゴムがいっぱい並んでいて、彼の日常生活が見えてきてなんだか楽しい。
この家で部屋で過ごしてるねんな、ふと机に目をやると引き出しから何かがはみ出していた。
数枚、端っこが出ていたので見てみるとどうやら写真のような物だった。勝手に見たらあかん見たらあかん、そう思うのに手は伸びてひっぱりだしてしまう。それはやっぱり写真で、テニス部で撮ったものが多い。最近のことなのにもう懐かしい、そんな気持ちでめくっていくと、一枚だけ自分の写真がでてきた。それも何度も見たのだろう写真特有の艶がなくピンと張っていない。
なんで…こんなん、期待してまうやん、心臓が一気にドッドッと鳴りだす。謙也が戻ってくる前になおさないと、元の場所に戻すとベッドに寄りかかるように座り込んだ。
ちゃう、ちゃうから期待したら、あかん。
何度も自分に言い聞かせているとドアが開いた。
「お待たせやでー!」と肩に頭を乗せこちらを見ているイグアナがとても大きくて驚いた。
「でか?!」
「そうか?こんなもんやろ」
「いやいやもっと両手サイズくらいやと思うやん?!」
「えー?」
「えー…」
ここを触ると喜ぶんやでとか、好物持ってきたであげてみるかとか、色々教えてくれた。イグアナって思っていたよりも表情があるし動きはノロマで可愛い。こんな可愛いと思わんかったなー、と撫でていると謙也がすごく優しい目で見てきているのに気がついた。
「どないしたん?」
「へ?いや」
「ん?」
なんかあったかと促すとどうしようか迷った様子を見せつつも「あんまわかってくれる人おらんからさ、なんや嬉しくて」へにゃっとした笑顔で教えてくれた。
「そうなん?かわええやん撫でると嬉しそうにしてくれるし」
「せやねん!喜ぶねん!おやつの時とか目キラキラさせよるしな!そんでな!」
よほど嬉しかったのかそれからはイグアナトーク。それが終わったのは彼が話疲れた頃。
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