マグロのカマ焼き−Zoro−


住人からのリクエストにはすごく性格が出る。
『肉』これはルフィ。これ以外の注文を付けてきた試しがない。
『ビールに合う肉』これはエース。少し高度だけど同じレベル。
女の子たちはそもそも夕食を外で食べてることが多い。
『遅くにごめん、鯛茶漬けってできる?』サボ。聞き方が丁寧。メニューも繊細だけど高度。
『肉豆腐頼む、材料は』ロー。料理しないからなのか毎回材料確認される。
『マナちゃんお手製のアクアパッツァが食べたいなー{emj_ip_0173}』サンジくんはテンションが高いのと、ちょっとだけ高度。
そしてゾロ。
『大信州に合う二品。魚』
お酒の名前だけなのと、もう買い出しもこっち任せ。
それでも律儀に締め切り時間前に連絡してくる。

スーパーで特価のマグロのカマを見つけて即購入。
湯引きして塩焼きにすべくオーブンへ。
後片付けが大変だけど美味しさには代えられない。
付け合わせのほうれん草の胡麻和えも盛り付けて。

神がかったように、オーブンが鳴ったタイミングでゾロが登場。

「いつも思うけどものすごくタイミングいいよね」
「そうか?」
「これ以上ないってタイミングだわ」

大信州を口切りし、当たり前のように注いでくれるゾロ。
今まで、酒豪なこの人に何度となく潰されそうになって。
その度にちゃんと部屋まで担いで行ってくれるのだけれど。

「あァ、うめェな」
「ふふ、よかった」

私は知ってる。
ベッドに降ろしてから、ほんの1.2分、この人が私を見つめて逡巡しているのを。
いつか、そんな日が来るのかもしれない。
それはそれでいい気もしている。

「ここに住んでる間は、いつだって作ってあげるよ」
「そのうち店開いたらどうだ」
「ああ、いいかもね」

でもしばらくはこのあいまいさを楽しんでいたい。

「そういや最近仕事どうだ」
「うーん、そこそこかな。ベビーシッターの仕事がね・・・」

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