鍋焼きうどん−Sabo−


家にいる時間の割にスペースに出てくる時間が一番少ないのはサボだと思う。
たぶん私の次に家にいる時間は長い。
でもその大半を、部屋で調べ物をするのに使っている。らしい。

そのサボがリクエストしてくるのは、夜食と呼ばれるメニューが多い。

21:45、サボからの連絡。
「夜遅くにごめん、今から鍋焼きうどんって作れる?」
「大丈夫!材料どうする?忙しいなら私買って来るよ」
「危ないから一緒に行く。スペースにいてくれ」

5分後に現れたサボは、いつもより青白い顔をしていた。

「夕飯食べないでPCにかじりついてた?」
「・・・わかる?」
「あんまり根詰めるのよくないよ」
「ちょっと今追い込みかかっててさー」

大学の院生だったか助教だったかの彼は、論文投稿のタイミングで、文字通り昼夜を問わない生活になる。
その生活に、私の作る夜食が、少しでも力になってるといいのだけど。

「今回は締め切りいつなの」
「再来週にはめどが立つな」
「長期戦ね」
「まーね」

白い息を吐きながら笑うサボは、そのまま息に溶けてしまいそうで。

「・・・明日の夜食の材料も買おうか」
「えっ、明日?」
「うん。何がいい?」
「えっと・・・じゃあ、おにぎりとか」
「りょーかい」

明日も、こうやって話をしよう、夜食を食べながら。
そう言う代わりに、私は明日のおにぎりの具の話をする。

「夜食といえばたらこだろ」
「いいね!炙ればお茶漬けもできるし」
「あ、むしろおにぎりよりそっちのほうがいい」
「ん!じゃあお茶漬けに変更!」

なかなか頼ってくれないあなたへの、私なりのエール。

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