学食−Law−


昨日の朝、黒板に『今日は夕飯パスで。ごめんなさい!』と書かれていて、たいして気にせず出勤して。
今日、やっと外来が切れたタイミングで食堂に来たら。

「あ?マナ?」
「わっ!ロー!」

見知った顔を見つけた。

「お前、何でここに?」
「・・・ついにバレたか・・・」
「おい、質問に答えろ」

聞けば、大学の研究棟で胚培養士として勤務しているという。
オレがここに来る前から務めてたと。

「なんで今まで会わなかったんだ」
「私はお弁当だから、行きと帰りしか外を歩かないし、ローはその時間は勤務中でしょう」
「ああ、たしかに」

胚培養士。人工受精や受精卵の管理をする仕事。
そういえばうちの研究棟に、成功率90%の凄腕がいると聞いたことがある。しかもパートの。

「お前、成功率は」
「今期90.2%」
「やべえな」
「恐れ入ります」
「なんでパートなんだよ」
「あんまり長時間やると効率落ちるし、うちの大学パートでも福利厚生は正社員と同じ待遇だし」
「ああ、なるほど」

スペースにいる時と違ってきっちり化粧して、ブラウスとスカートを身に着けたこいつは、何つーか、

「まともな社会人に見える、とか思った?」
「・・・そうだな」
「これでもそこそこ、ちゃんと仕事してますよーだ」

素直に、綺麗な女だと、思った。

「時間が被らないとはいえ、週5でいるのに今まで会わなかったとはな」
「そんなに働いてないよ、ここは週3」
「あ?」
「残りの2日はダブルワークしてて」
「は!?」

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