クリームチーズ山椒和え−Zoro−


遅くなった夕飯の片づけをしていたら、ゾロが帰ってきた。
「おかえりー」
「おおまだいんのか」
「今日は飲み会って言ってたもんね?」
「あァ、でも飲み足りねえな」
そう言って、カバンから日本酒を取り出してニヤリと笑うゾロ。

「ご相伴しましょうか?」
「つまみと交換だな」
「あ、ちょうどいいのあるわ」

常備しているクリームチーズをつまみに、今日は越乃寒梅。
でも、体調が万全じゃなかったのか、すぐにお酒が回って。
「おいマナ、部屋戻るぞ」
「…かたづけしてからじゃないとだめー」
「チッ、わかったやりゃあいいんだろ」
「うふふーありがとー」
こういう時、住人のみんなは優しいから私の代わりに片づけをしてくれることが多い。

ゾロの皿洗いを待ちながら少し寝ていたらしい。
持ち上げられる感覚で目が覚めた。
「ったく、しょうがねえなァ」
いつもゾロがお姫様抱っこで部屋まで運んでくれるから、気恥ずかしくて目が開けられない。
今日もいつも通り寝たふりをして、ゾロもいつも通り私の鍵で部屋に入って。
ベッドに降ろして、1〜2分無言で逡巡するのもいつも通りで。

なのに。

いつもはそのまま部屋を出ていくはずのゾロが今日は動かなくて。
頭に触れる手。
そのまま少しぎこちなく髪をなでられる。


…こんな風に触れられたのは初めてかもしれない。


何度か髪をなでた手は、輪郭をなぞって唇にたどり着く。
下唇のラインをなぞる指。


…キスされる、かもしれない。
 いま起きたふりをするか、流されるか。


アルコールでぼんやりとした頭で考えている間に手は離れて行って、
いつも通りの速度で遠ざかる足音、鍵のかかる音、ポストに鍵が落ちる音。


廊下を遠ざかる足音が完全に聞こえなくなってから、詰めていた息を吐きだした。
「びっくり、したあ…」


いつかそんな日が来るような気がしていたけど、
それは、思ったよりも早いのかもしれない。

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