続・鍋焼きうどんB−Sabo−


マナが自分を組み立てなおすようにスペースを作り始めてから2年。
住人の顔ぶれも入れ替わり、古いスペースを知っている人も少なくなった。
交流が進むほど、マナは元気を取り戻しているように見えた。
でも、同時に、オレ以外のやつと二人で、酒を酌み交わしているのも見かけるようになった。

「あーおなかいっぱい」
「やーうまかった」
「こんな時間に食べすぎちゃったね」
「量多かったかもな」
「絶対誰かが匂いにつられてくると思ったんだけどなー」

そうじゃない方がいいと思う自分がいた。


オレ以外のやつと過ごしているのを見た時の、焦りのような怒りのような感情。
言葉を交わすようになった頃から、気づけば段々と強くなっていく女の気配。
それらの感覚は、オレの中に溜まって、淡いもやになって、
夢の中にマナが登場したり、夢じゃないところに登場させたりも、正直、ある。

それでも。
大切な時間を、壊すくらいなら。
このままでいることを、そのたびに選んでいる。

「明日もリクエストあったら教えてね」
「おう、考えとく」

もしオレがマナに何か言うとしたら、
それはこの家を出ていく時だ。
それまでこの淡いもやは、大切に抱えていこう。

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