鮭雑炊@−Law−


土曜日、珍しく朝早くにローがスペースに出てきた。
手には洗濯物カゴ。
「おはようロー、早いね」
「まあな」
「朝ごはんこれからなんだよね」
「ああ、わかってる。俺もいったん寝る」
「できたらLINEする?」
「頼む」

朝ごはんができて連絡したけど既読がつかない。
「…洗濯物も終わったのになぁ」
このままだともう一回洗濯することになる。
そして今日は快晴、洗濯日和。

{洗濯もの終わってるよー}
{干しとく?}
{干しとくねー}

一方的にLINEを送って、共用部の物干しに洗濯物を干し始めた。
そしてすぐ少し後悔した。

洗濯物のほとんどが下着だったから。


まあでも、干しとくって言っちゃったし。
と無理やり自分を納得させて、全部干し終えた。
あまりにも枚数が多かったから、しばらく洗濯する余裕がなかったのかもしれない。

そうだよね、お医者さんだもんね。
深夜帰宅も多いし、朝は私より早く出勤するし、それだけハードだろう。


結局ローから返信が来たのが4時間後で、もうそのころには洗濯物は完全に乾いていた。
{悪い、今起きた}
{いいよ。むしろ大丈夫?調子悪い?}
{…頭痛はする}
{あらら。今行くね}

取り込んだ洗濯物をかごに入れてローの部屋に行く。
ローはいつもに増して顔色が悪い、というか、よく見てみればちょっと顔が赤かったり目が潤んでいたりする。
「大丈夫?」
「頭痛がするだけだ」

隙をついてローの頬に触れると、高めの体温がてのひらに伝わる。

「…平熱低めだよね?」
「だからどうした」
「これ絶対熱あるって」

気まずそうに目をそらすロー。

「医者の不養生だねえ」
「ほっとけ」
「ほっとかなーい」

するりとローの横をすり抜けてぐちゃぐちゃのベッドを直す。

「病人はベッドで寝ててください」
「おい、」
「あとで朝ごはん雑炊にして持ってくるから」
「・・・」

言葉よりは体はつらいのか、ローはおとなしくベッドに潜りこむ。

「飲み物とか買ってくる?」
「いや、あるからいい」
「あと他にしてほしいことは?」
「…特にないが、」

少し言いよどむ気配を感じて、目で先を促すと。


「…呼んだら、来てほしい」


…かわいい。
という衝動をできるだけ顔に出さないようににっこり笑ってうなづいた。


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