鮭雑炊A−Law−


目が覚めると午後になっていて、強い西日がさしていた。
こんな時間に部屋にいること自体も、いつ以来かわからないくらい久しぶりだった。

ここ最近、体力勝負のオペが立て続いていたからかも知れない。
体が強いほうではなかった子供のころをふと思い出す。

「目が覚めたら教えてねー」という連絡に返信をすると、すぐにマナが部屋にやってきた。

「気分どう?」
「悪くない」
「そっか、良かった」

マナが手を伸ばして俺の頬から首に手のひらで触れる。
なぜか、大人に世話される子供の気分になり、されるがままに身を預ける。

「だいぶ熱下がったみたいね」
「ああ、すっきりした」
「その分汗もかいたでしょ、着替えたら?」

差し出されたスポーツドリンクを口に含み、食事を作ってくると出ていく後姿を目で追う。
無防備に男の部屋に入りすぎじゃないか、と言いたくもなるが、
普段はそうでもないことを考えると病人には特別なのだろうか。

着替えてベッドに転がっていると、マナが部屋に戻ってきた。
理由はないが寝たふりをしていると、お盆をキッチンに置く音。
近づいてくる足音。
湧き上がる嗜虐心。

「ロー?」

覗き込んでくる体をベッドに引きずり込む。

「わっ」
「無防備過ぎんだよお前」

至近距離でニヤリと笑って見せた。
恥ずかしがったり怒ったりするかと思ったが。

「そんなこと言えるようになったなら、もう大丈夫ね!」

帰ってきたのは意外な笑顔だった。
また手のひらで頬を包まれる。

「ほら、早く雑炊食べちゃおうよ」

唐突に、怒りにも似た強い感情が沸き上がる。
感情の名前を探しながら、目の前の体を強く腕に抱え込んだ。

「ちょっと、ロー、苦し、」
「うるせえ、大人しくしてろ」

少し身を捩ったりしていたマナが諦めたのか静かになる。
ああ、そうか、この感じは。
女としてみている相手に子ども扱いされてキレるガキじゃねえか。


漏れた苦笑に不思議そうに顔を上げるこいつを、どうやら俺は女として見ていたらしい。


「なんでもねえよ」
そう言って、想定外の抱き心地の良さを味わいながら目を閉じた。


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