アサリの酒蒸し@



「マナ、お帰り」
「…ただいま」
「早かったな、不作だったか?」
「おい、つまみ頼めるか」

平日のこの時間に、サボが部屋にこもっていないのも、ローが帰宅しているのも、ゾロが起きているのもレアだ。

「だから人数合わせだってば。みんなで何飲んでるの?」
「こいつの部屋に獺祭があってよ」
「え、あの高いやつ?」
「貰いもんだ」
「ここのやつらはみんな日本酒飲むよな」
「サボも飲めなくはないよね」
「まあ、そこそこ」
「つまみが乾きモノだけだとどうもな」
「わかった、適当に見繕ってくる」

部屋に食材を取りに戻りながら、少しの煩わしさと裏腹に、
自分の帰りを待ってくれる人がいるって幸福なことなのかもしれない、と感じていた。


「いいのありましたよー」
「なんだ」
「アサリの酒蒸しなんてどう?」
「お!いいな!」

スペースに戻ってきて、コート脱いだ途端、自分の肩回りに3人の視線が集まるのを感じた。
一瞬体に力が入って、少し息を吐く。
何も感じなかったふりをしながら、コートとバッグををソファに置く。

入口近くに座るローは、私の後方にいるからか、かなり無遠慮に視線を送ってきていて、
スペース中央のソファに座るサボは、私が通るときだけ見ていないふりをして、
一番奥、キッチン前に座っていたゾロは、何ていうか背中で気配を探ってきているような。

普段服に隠れる部分が人の目に触れるというだけで、こんなに居心地が悪いのはなぜだろう。


羽織るもの持ってくればよかったと思うけど、取りに戻るのも自意識過剰な気がして躊躇う。
自分だけ意識しているとしたら、それもそれで恥ずかしい。

合コンでもそうだったし、きっと冬に肩を出しているのが物珍しいんだろう。
頭の中で強引にそう結論付けて、意識を料理に切り替えようとエプロンを身に着ける。



- 13 -

*前次#


ページ: