アサリの酒蒸しA−Sabo−




さっきから剣道野郎と外科医がチラチラとマナの肩や二の腕に視線を送っている。
とかいう俺も。

大学で肩を出している女子はたくさんいるし、谷間や太ももを見せつけてくる奴らもいる。
見慣れている、というよりむしろ嫌気がさしている、はずなのに。



文字通り、目を奪われる。


触れてみたい、と思ったりする。





…破壊力がありすぎる。





同じ部位の露出なのに、普段隠されているものだというだけで、こんなに魅惑的に見えるものなのだろうか。
いや、きっと、俺も含めマナに惚れてるからこそなんだろうが。

どうにかして触る方法はないかと、論文を書いている時の100倍の速度で思考が回転する。
でもついこの間、自制が効かなかったせいでマナを傷つけたわけだし。
現実的には無理だろうから、せめて現実じゃないところで実現させるために、目に焼き付けておこう。


キッチンで料理する時は必然的にこちらに背を向けることになるから、その度に全員の視線がマナの肩に注がれ、
マナがこちらに向き直るたびに、全員がさも気にしていなかったような顔をして視線を逸らすのを繰り返していた。


ふと、一番近くに座っていた剣道野郎が立ち上がってスペースを出ていく。
「…ゾロ?食べないの?」
「いや、すぐ戻る」

戻って来たそいつの手にはネイビーのカーディガン。

「おい、着ろ。風邪ひくぞ」
「あ、…ありがと」

外科医は完全に「なにしやがる」という表情になっているが、
なるほどな、と腑に落ちた。



独占欲だ。

他の男の視線に晒したくないと。




剣道野郎の表情を伺えば、普段通りの仏頂面。
カッコいい真似してくれるじゃん、と、少し悔しい気持ちにもなる。


カーディガンを着た一瞬、俺の座る位置からだけギリギリ見えるマナの表情が、変わった。

なにかが心に灯るような、本当に微かな笑みが口元に浮かぶ。
同時に痛みをこらえるような目元の表情。




それを見た瞬間、知ってしまった。
マナが、恋をしていることを。








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