早朝おにぎりA


マナがランチボックスを取り出してカップを並べる。
牛肉のしぐれ煮、煮卵、ミニトマト、ほうれん草は胡麻和えと見せかけてナムル。
こんな非常事態なのに彩りも栄養も完璧だ。

「こんな早くからお弁当?」
「うん、ゾロが出動要請らしくて」
「あーそっか、お巡りさんだもんね」
「ねー、あ、噂をすれば」

スペースにゾロが来た。

「できてるよ」
「あァ、恩に着る」
「おにぎり、出来立てじゃなくてごめんね」
「いや、構わねぇ」

ゾロから差し出された鍵を受け取った後、マナがお弁当袋を差し出す。
受け取って歩き出そうとするゾロをマナが呼び止めた。
空いているゾロの手をマナが両手で握って、一瞬目を閉じる。

「…気を付けて、頑張ってね」
「あァ、ありがとな」

見えなくなるまで見送る背中は、恋する女子。
これは明るくなったら女子会だなーとか思ってたら今度はトラ男がスペースに来た。

「おはようトラ男、大丈夫?」
「震度5だってな」
「ロー、断水するかもだから、」
「風呂に水溜めだろ」
「え、なにそれ」
「停電と断水ってセットで来ること多いから、お風呂に水溜めとくといいの」
「トイレ流すのにも水は使うからな」
「へーそうなんだ!知らなかった!」
「ナミもビビもやっておいて損はないよ」
「それと今のうちに身内に連絡しとけ。いつ電波途切れるかわからないぞ」
「そうね、そうしようかしら」

この二人、どんな修羅場をくぐって来たんだろう。



ナミとビビの背中を見送っていると、不意にローが話し始めた。

「おそらく病院から要請が来るだろう、いつ帰れるかはわからない」
「…そっか、そうだね」

お医者さんだから。こういう時はケガ人も多くなる、体力勝負だ。

「私に何かできることある?」
「留守の間、部屋を頼みたい」
「わかった。揺れて散らかったら片付けとくね」
「助かる」

荷物を準備しに戻るというローの背中に声をかけた。

「待って、ロー!」
「?」
「朝ごはんにおにぎり、作っておく?」

少し目を丸くしたローが、息を吐きながらほんの少しほほえんだ。

「…中身は梅以外にしろよ」
「もちろんです」

鍋でご飯を炊くのは久しぶりだけど、ちゃんと美味しくなるように、頑張ろう。
土鍋でご飯を炊いて、卵焼きと味噌汁を作りつつ考える。

住人の中で安否確認が取れたのがゾロ、ナミ、ビビ、ロー。
土曜の早朝だからロビンは彼氏さんのところ。
サンジくんは仕入れの時間のはず。
エースは一昨日から福岡に出張、ルフィは…、お爺さんが来て、連れて行かれたんだった。

…ひとまず、離れてるみんなも安否は確認しておこう。
LINEにわかってる限りの安否を乗せて、返信を待つ。



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