早朝おにぎり�A
マナがランチボックスを取り出してカップを並べる。
牛肉のしぐれ煮、煮卵、ミニトマト、ほうれん草は胡麻和えと見せかけてナムル。
こんな非常事態なのに彩りも栄養も完璧だ。
「こんな早くからお弁当?」
「うん、ゾロが出動要請らしくて」
「あーそっか、お巡りさんだもんね」
「ねー、あ、噂をすれば」
スペースにゾロが来た。
「できてるよ」
「あァ、恩に着る」
「おにぎり、出来立てじゃなくてごめんね」
「いや、構わねぇ」
ゾロから差し出された鍵を受け取った後、マナがお弁当袋を差し出す。
受け取って歩き出そうとするゾロをマナが呼び止めた。
空いているゾロの手をマナが両手で握って、一瞬目を閉じる。
「…気を付けて、頑張ってね」
「あァ、ありがとな」
見えなくなるまで見送る背中は、恋する女子。
これは明るくなったら女子会だなーとか思ってたら今度はトラ男がスペースに来た。
「おはようトラ男、大丈夫?」
「震度5だってな」
「ロー、断水するかもだから、」
「風呂に水溜めだろ」
「え、なにそれ」
「停電と断水ってセットで来ること多いから、お風呂に水溜めとくといいの」
「トイレ流すのにも水は使うからな」
「へーそうなんだ!知らなかった!」
「ナミもビビもやっておいて損はないよ」
「それと今のうちに身内に連絡しとけ。いつ電波途切れるかわからないぞ」
「そうね、そうしようかしら」
この二人、どんな修羅場をくぐって来たんだろう。
*
ナミとビビの背中を見送っていると、不意にローが話し始めた。
「おそらく病院から要請が来るだろう、いつ帰れるかはわからない」
「…そっか、そうだね」
お医者さんだから。こういう時はケガ人も多くなる、体力勝負だ。
「私に何かできることある?」
「留守の間、部屋を頼みたい」
「わかった。揺れて散らかったら片付けとくね」
「助かる」
荷物を準備しに戻るというローの背中に声をかけた。
「待って、ロー!」
「?」
「朝ごはんにおにぎり、作っておく?」
少し目を丸くしたローが、息を吐きながらほんの少しほほえんだ。
「…中身は梅以外にしろよ」
「もちろんです」
鍋でご飯を炊くのは久しぶりだけど、ちゃんと美味しくなるように、頑張ろう。
土鍋でご飯を炊いて、卵焼きと味噌汁を作りつつ考える。
住人の中で安否確認が取れたのがゾロ、ナミ、ビビ、ロー。
土曜の早朝だからロビンは彼氏さんのところ。
サンジくんは仕入れの時間のはず。
エースは一昨日から福岡に出張、ルフィは…、お爺さんが来て、連れて行かれたんだった。
…ひとまず、離れてるみんなも安否は確認しておこう。
LINEにわかってる限りの安否を乗せて、返信を待つ。
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