早朝おにぎりB




キッチンには、いつも通りの笑顔を浮かべて、いつも通りの動きでおにぎりを握っていくマナ。
さっき同じ揺れを体験したはずなのに、ソファで膝を抱えてうずくまっている私と違って、
マナにはやることがいくつも見えてるみたいだ。

「マナ、あんたあと何やるつもり?」
「うーん、ひとまずみんなの安否確認出来たら、買い出しかな」
「…また揺れるかもしれないわよ?」
「それはきっと1時間後でも3日後でも変わらないよ」
「…タフねえ」
「ただいま、マナ、ナミさん」
「コブラさん心配してなかった?」
「そうね、今すぐ迎えに来そうな勢いよ」

ビビが帰ってきて、不安そうだなと思ったけど、きっとあたしもおんなじ顔をしてるんだろう。
ふう、とひとつ溜息をつくと、マナが微笑みながらこっちを見た。

「さ、腹が減っては戦はできぬって言うし、かなり早いけど朝ごはん食べない?」
「…そうね、変な時間に起きちゃったからお腹減ったし!」
「ええ、いただきましょうか」

いただきまーすとお味噌汁に口を付けていると、トラ男がやってきた。

「招集かかった?」
「あァ、食べたら出る」
「召し上がれ」
「…いただきます」
「お弁当できるけど」
「要る」
「昨日と同じでいい?」
「問題ない。うまかった」
「光栄です」

この二人も不思議だ。
なんていうか、もう夫婦のような空気が漂っていて、
恋愛っていうより、一緒に生きていくパートナーとして覚悟を決めた人達みたい。

5分で食べ終わったトラ男に弁当袋を渡すとき、マナはゾロにしたように、
手を握ってまた一瞬目を瞑った。



「ねー、マナ」
「なあに?」
「ゾロとトラ男の手を握ってたのってなんなの?」
「…なあにそれ、見てなかったわ」
「…さあ?」

あれは、祈り。
ケガしませんように。ちゃんと眠れますように。ちゃんと帰って来られますように。

3人の携帯が一斉に鳴る。スペースのグループラインだ。

サンジくんより、
{仏頂面で仕事してるクソマリモ発見}
添付されていた写真には、制服を身にまとって交差点の真ん中で車を誘導しているゾロ。
大きくひとつ胸が鳴った。

「ミスターブシドーの制服姿、初めて見たわ」
「この顔で仕事してたら、たいていの子供は泣きだすわよ」
「そうね」
「ふだん愛想振ったりしないもんねーあいつ」

ナミとビビが話す声を聞きながら、私は声を出せずにいた。
誰かがハンドル操作を間違ったら命を落とすような仕事をしているんだ、という改めての恐怖。
ひとつ、大きく息を吐く。

「…マナ?」
「どうかした?」
「…制服がカッコよくて心臓止まってた」
「なにアンタ制服フェチだったの!?」



- 25 -

*前次#


ページ: