早朝おにぎりE


交通誘導が割り当てられて交差点のど真ん中に先輩と並んで立っていた。
車と歩行者を交互に流し続ける勤務。
つい数時間前、やたらゆっくり進んできて自発的に停止線で止まった車がいた。
横目で確認したオレの目にはグル眉クソコックの金髪が映る。
ちょうど流れを切り替えるタイミングだったこともあって、先輩と示し合わせて向きを変える。
クソコックを正面に見る体勢になった。

手信号をしながら見るとアイツはスマホを構えてやがった。
あんの野郎、と思った時にはもう遅く、ニヤけた顔でこっちを一瞥した後、
どうやらその写真をどこかに送ったようだった。
勤務中の最大限の対抗として、盛大に睨みつけてやった。

勤務を始めたころは地平線にあった太陽が高くなってきて、
そろそろ交代要員が来るかという頃。
断続的に揺れは続き、車の速度も抑え気味の中、こちらに向かって歩道を歩いてくる男女。
国道を遠く見通す際にそいつらのシルエットが目に映り、一瞬で分かった。
マナと、クソコックだ。

クソコックが自転車を押し、その数歩前をマナが歩いている。
次の瞬間、今日何度目かわからない余震があった。
一旦、周囲を走行する車の安全確保をしてからあいつらに目を戻すと、
コックとマナの顔が斜めに重なっていた。
心臓を鷲掴みにされたような衝撃が体に走った。



{安否確認!}
{帰宅した人、マナの部屋に顔出してください。夜通し鍵開けときます}

不用心にもほどがあるだろ。

昼間、あの後クソコックとマナは何事もなかったように歩き出した。
クソコックだけがオレを見て挑発してきやがったのと、マナが全く動揺していないのを見て、
あれは“そう見えた”だけで実際はそうではなかったのだと理解した。


マナの部屋の前に立つ。
扉は本当に鍵がかかっていなかった。

闇の中から寝息が聞こえる。
靴を脱ぐ音でマナが起きた。

「ん…、…ゾロ?」
「…あァ」

ふらりと起き上がって、ぺたぺたと音を立てて近づいてきたと思ったら、
マナの頭が肩に乗った。
心臓が跳ねる。

「おかえり」
「…おう」
「…わたし、普段どれくらいゾロとかみんなを頼りにしてるか、わかった」
「…」
「いてくれてありがとう、ゾロ」

空いている方の手でマナの頭を軽く叩く。
マナの呼吸が深くなった。

非常事態に昂った神経が少しずつ静まっていくのが分かった。
こいつを宥めているようで、自分を落ち着かせているのかもしれなかった。

「…お茶でも淹れる?」
「…あァ、頼む」

時計は4時を指している。




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