とても短い話


1000文字に満たない話、ネタなどを置いています。
名前変換はありません。

巻き込まれた高虎


「ぐすん」

「……」

何故こうなったか知らないが、自分は今、見知らぬ子供に襟の端を掴まれていた。しかも子供は泣き腫らしている。

「うぅっ、は、はう、え……」

どうやら迷子らしい。母と町へ来たはいいが、おおかたこの混みように思わず手を離したかしてはぐれたのだろう。かと言って、何故見ず知らずの男の衣を掴むことになるんだ。

「おい」

「ひっ!」

声をかけただけというのに、子供は小さな肩を大袈裟に震わせた。大きな目が白黒し、瞬くことによって大粒の涙がこぼれ落ちる。大人が怖いのなら尚のこと何故自分を巻き込んだ。

「怖がらせるつもりはない」

息をつき、とりあえず目線を合わせてみる。以前、おねね様が目線が高いと子供は怯えると言っていたのを思い出したからだ。子供もとい娘は、齢を六ないし八つくらいに見えた。

「馴染みの団子屋に連れて行ってやる。そこでお前の母の情報を伝えろ。助けてくれるだろう」

立ち上がって歩き出そうとしたところ、再び襟の端を掴まれて今度はくいくいと軽く引っ張られた。

「言いたいことがあるなら言葉にしろ」

窘めれば、娘は静かに手を離し、一言。

「…………お腹空いた」

知るか、と片付けてしまいたかったが、周囲の目線がちらほら自分に投げられていたので、やむなしと母親探しを引き受けることにした。


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