曹休

「師匠殿っ……!!!」

天幕に駆け込んできたのは我が弟子、曹休だった。負傷もそのままに、ろくに泥も落とさず切羽詰まった顔で駆け寄る。

「落ち着け。私は大丈夫だ」

「―――っ」

そう言ってみるも、彼の顔は晴れない。牀に横たわり、上体だけ起こす。衣擦れと共に短い脚が上がった。欠けた右脚を見る彼は、私以上に傷ついた顔をしていた。

「……敵に囲まれたと聞きました」

「ああ。逃げる隙を突かれて毒矢で射抜かれたんだ。だが幸い腕の立つ大医のおかげで命は救われたよ」

本来なら死んでもおかしくなかった。それを片脚だけで救われるなら安いもの。

「これも天啓なんだろう。私は郷里に戻るとするよ」

「そんなっ……!まだあなたから教えられてないことがあるというのに……」

「文烈。私の教えなどなくても、お前は既に立派な曹魏の将だ」

「自分などまだまだです。道に迷ってばかりで……。だから師匠には傍に居ていただきたいんです。迷わぬよう、手綱を握っていてほしいのです」

あまりに切々と語るものだから、捨てられた仔犬を想起してしまって、とうとう白旗を掲げてしまった。どうにも彼の要求には弱くなってしまう。





無条件降伏

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指先