魯粛

身の回りを世話する侍女の腰に、歪な形の佩玉が揺れているのを見つける。

「―――あなた、それ貰い物?」

何気なしに訊ねると、侍女は最初はきょとんとしていたが、自分の目線が己の腰に行っていると気づき顔を向け、そこでぽっと顔を赤らめた。

「あの、実は近々結婚する予定でして……」

「まあ!そうなの。ではそれは旦那から?」

「いえ、夫と一緒に作ったんです」

「一緒に?」

思いがけない返答につい聞き返してしまう。侍女は嫌な顔をせず教えてくれた。

「作ってみたいと言ったら彼が適当な石を見繕ってくれて」

「そう、いい旦那ね」

「そんな……。ありがとうございます」

彼女には長いこと世話になっている。婚家に嫁ぐより前から。生家の侍女など連れて来ないのがしきたりなのだが、夫になった男がそういう細々としたものにこだわらない気性であったため、必要なら連れて来るといい、と言って容認してもらったのだ。ゆえに彼女とは片手を優に超す付き合いとなる。他にもたわいない世間話に花を咲かせていると、侍女が背後を見て砕けた雰囲気を引き締め、折り目正しく揖礼する。

「―――楽しそうだな」

来訪者は夫の子敬様だった。侍女にお茶を淹れるよう言いつけて部屋には二人きりとなる。

「何話してたんだ?」

「たわいないことですよ」

「教えてくれないのか」

「……結婚するそうです。彼女」

「そうか、それはめでたい。彼女には世話になっているからな、何か贈ってやろう」

「ねえ、あなた」

「どうした」

「彼女、伴侶から佩玉を貰ったんですって。私も欲しいわ」

彼は目を丸くし、少し後で声を上げて笑った。

「お前が素直にねだるとは珍しいな。街一番の腕利きに言って作らせよう。用いる玉はどうする。俺は芙蓉がお前に似合うと思うんだが」

他にも田横や和田ホータン玉もいい、と続ける彼の袂をくいくいと引いて言葉を止まらせる。許せば延々と続きそうだ。

「……私はあなたと手ずから作ってみたいのだけど」

先程の快活ぶりは鳴りを潜め、静々と手を取られた。大きくがっしりした手は私の手をすっぽり覆い、びくともしない。岩のようだと思った。

「時代は乱世。治安も未だよくならない。そんな状態で外へ出ては危機を招くだけだ」

なら一緒に来たらいいのに、と出かかった言葉は飲み込んで、わかりましたと今日も胸中の灯火を握り潰す。





縁のない話

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